画像診断Q&A

レジデントノート 2016年10月号掲載
【解答・解説】腹痛・嘔気・嘔吐を主訴に来院した40歳代女性

Answer

ループス腸炎

  • A1:腸管所見としては,回腸全般にわたり壁が肥厚しており,target sign図23)も認められる.結腸には病変は認められない.腸管外所見としては,大量の腹水の貯留が認められる(図13).腸間膜の浮腫と血管の拡張(図3)も認められる.
  • A2:SLE(systemic lupus erythematosus:全身性エリテマトーデス)の既往があり,画像所見もループス腸炎として典型的である.ステロイドによる治療で改善した.

解説

SLEに合併する下部消化管病変は,ループス腸炎とタンパク漏出性腸炎に分類され,ループス腸炎は小腸が主体となる虚血性腸炎型と大腸が主体となる多発潰瘍型との2つに大別される.虚血性腸炎型は漿膜側の血管炎による虚血と腹膜炎が主な病態である.それに対し,多発潰瘍型は生検を施行しても血管炎が確認される例は少なく,慢性炎症細胞浸潤や間質の浮腫が主な特徴である1,2)

虚血性腸炎型のCT所見は上記の病態を反映し,腸管病変として腸管浮腫(91%),target sign(67%),腸管の拡張(24%)が,腸管外病変として腹水(78%),腸間膜血管の拡張(71%),腸間膜脂肪織の濃度上昇(71%)などが高頻度に認められる.そのほかにも腸管内外含め,種々の所見を認めることがある.病変の部位としては回腸(84%)と空腸(83%)が最も多く,次いで結腸(19%),十二指腸(17%),直腸(4%)の順に多く認められる3)

このように画像所見は非特異的なものが多く,SLEの既往と画像所見,臨床所見とを併せて診断される場合がほとんどである.しかしループス腸炎を契機にSLEと診断された例,あるいはSLEによる全身症状に先行して腸炎を発症した例も報告されている1,3).またループス膀胱炎では必ずループス腸炎がみられると言われている.ループス腸炎が疑われた場合にはCTで膀胱壁肥厚の有無も確認することが大切である4)

また,SLE患者の多くは非ステロイド解熱鎮痛薬やステロイドなどの内服歴がある.SLE患者の腹痛を診療する際には,それらの薬物による消化器症状との鑑別を行うことに加えて,それらの薬物のため,血管炎による虚血や穿孔などの重篤な腹部症状が修飾されている可能性もあることを考慮する必要がある5)

target sign
造影CTにおいて腸管の層構造が保たれたまま壁が肥厚する所見.腸管壁の内外側に高吸収を認め,中心には浮腫を反映し肥厚した低吸収を認める.ループス腸炎のほか,炎症性腸疾患,感染性腸炎,虚血性腸炎などにも認められる6)
図1 来院時腹部造影CT 図2 来院時腹部造影CT
					図3 来院時腹部造影CT

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文献

  1. 城 由起彦,他:全身性エリテマトーデス:膠原病,免疫・アレルギー性疾患.胃と腸,38:513-519, 2003
  2. 前畠裕司,他:血管炎による消化管病変の臨床診断─全身性エリテマトーデス.胃と腸,50:1397-1405, 2015
  3. Janssens P, et al:Lupus enteritis:from clinical findings to therapeutic management. Orphanet J Rare Dis, 8:67, 2013
  4. 「わかる! 役立つ!消化管の画像診断」(山下康行/編著),学研プラス,2015
  5. Sultan SM, et al:A review of gastrointestinal manifestations of systemic lupus erythematosus. Rheumatology(Oxford),38:917-932, 1999
  6. Macari M & Balthazar EJ:CT of bowel wall thickening:significance and pitfalls of interpretation. AJR Am J Roentgenol, 176:1105–1116, 2001

プロフィール

澤田 将史(Masafumi Sawada)
慶應義塾大学医学部 放射線診断科
松本俊亮(Shunsuke Matsumoto)
慶應義塾大学医学部 放射線診断科
陣崎雅弘(Masahiro Jinzaki)
慶應義塾大学医学部 放射線診断科
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