画像診断Q&A

レジデントノート 2016年12月号掲載
【解答・解説】若年女性の下腹部痛

Answer

卵管卵巣膿瘍

  • A1:両側付属器領域に嚢胞性病変を認め,卵巣と思われる(図12).よく見るとこれに連続して管腔様構造を認め,壁肥厚および壁の造影効果(図13図1)を伴っており,拡張した卵管と思われる.骨盤内の腹膜は炎症波及により軽度肥厚している(図2).
  • A2:Chlamydia trachomatis IgA陽性であることをかんがみ,卵管卵巣膿瘍が疑われる.

解説

骨盤内感染症は卵管炎や卵巣炎,子宮周囲炎などを含む概念であり,多くは性行為感染を原因とする.症状としては下腹部痛,発熱があり,不正性器出血がみられることもある.起因菌はChlamydia trachomatisのほか,Escherichia coliなど一般細菌が多くを占めるが,IUD(intrauterine contraceptive device:子宮内避妊器具)装着患者では放線菌感染の頻度が高いことが知られている1).成人に対するChlamydia trachomatis感染症の検査としてELISAによるIgA,IgG抗体測定が行われている.本症例のように,IgA陽性,IgG陰性を呈する状態では活動性感染が疑わしいとされる2)

卵管卵巣膿瘍は,卵管炎により卵管壁が肥厚し,卵管が閉塞し卵巣にまで炎症が波及することで形成される3).超音波検査では卵管卵巣膿瘍は厚い被膜で覆われた嚢胞性腫瘤を呈する.CTでは,卵管・卵巣壁の肥厚と強い造影効果,周囲への炎症波及や癒着による骨盤内脂肪織の混濁や腹膜肥厚,腸間膜内の索状構造などを認める.拡張した卵管は管腔様構造として認められるが,消化管との区別が難しいこともあり,必要に応じてthin sliceやMPR(multi-planar reconstruction)での観察を行う.腫瘤内部のガス像は膿瘍を示唆する所見だが,卵管卵巣膿瘍においてみられる頻度は高くない4)

生殖可能年齢の女性の腹痛では内膜症性嚢胞が鑑別疾患となる.CTでは,卵管卵巣膿瘍と内膜症性嚢胞は類似した所見を呈する3).MRIでは,典型的な卵管卵巣膿瘍はT1強調画像で低信号,T2強調画像で高信号を呈し,T1強調画像で高信号となる内膜症性嚢胞との鑑別は容易であるが,出血などの影響により判断が困難であることもしばしば経験される.

若年女性において,長い経過の腹痛では卵管卵巣膿瘍を鑑別にあげる必要があるが,画像診断のみでは判断困難な症例も存在する.すべての診療の基本となることではあるが,詳細な身体所見や検体検査など,臨床所見と画像所見を併せて判断することが肝要である.

図1
図2
図3
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文献

  1. 「婦人科MRIアトラス」(今岡いずみ,他/編著),p234-235,学研メディカル秀潤社,2004
  2. 「産婦人科診療ガイドライン-婦人科外来編2014」(日本産科婦人科学会,日本産婦人科医会/編監),日本産科婦人科学会事務局,2014
  3. 竹内麻由美,他:卵巣・卵管.症例の比較で学ぶ画像診断 婦人科・泌尿生殖器領域50選.画像診断,31:86-88, 2011
  4. 福永 健,他:婦人科領域の一般的な骨盤内炎症性疾患の画像診断.骨盤部感染症の画像診断―迅速な診断と治療のストラテジー―.画像診断,36:13-22, 2016

プロフィール

津崎盾哉(Junya Tsuzaki)
慶應義塾大学医学部 放射線診断科
松本俊亮(Shunsuke Matsumoto)
慶應義塾大学医学部 放射線診断科
陣崎雅弘(Masahiro Jinzaki)
慶應義塾大学医学部 放射線診断科
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