画像診断Q&A

レジデントノート 2017年2月号掲載
【解答・解説】咳嗽と左胸痛を主訴に来院した20歳代女性

ある1年目の研修医の診断

胸部単純X線写真にて左下肺野に空洞を認める.周辺構造との関係性を評価するために,次に必要な検査はCTである.結核が鑑別にあがる.年齢からは肺癌の可能性は少ない.

Answer

気管支閉鎖症

  • A1 :胸部単純X線写真にて左下葉に複数の薄壁空洞(図1)がありおのおのに液面形成がみられる.横隔膜とのシルエットサインが陽性であり病変は左下葉にあることがわかる.気胸や胸水貯留はない.
  • A2 :肺膿瘍にしては発熱,喀痰がなく,炎症所見も乏しい.多発性薄壁空洞に液体が貯留しているので,年齢を考慮して肺分画症,先天性嚢胞,気管支閉鎖症などの先天性疾患に感染が合併したものと考える.病変のある左下葉は肺分画症の好発部位であるので,鑑別のためにはまず造影CTを施行すべきである.

解説

胸部単純X線写真および造影CT(図2)にて複数の薄壁空洞が認められ,おのおのに液面形成がみられる.空洞の壁が薄いことから,感染症を契機に肺胞構造が破壊され,空洞形成をきたしたと考えるよりは,もともと嚢胞があったところに感染を合併し液面形成をきたしたと推測される.嚢胞性肺疾患は先天性嚢胞と後天性嚢胞に分けられる.先天性嚢胞には,気管支原性嚢胞,肺分画症,先天性嚢胞状腺腫様奇形(congenital cystic adenomatoid malformation:CCAM),気管支閉鎖症がある.本症例の造影CTでは大血管からの流入血管は認められず,肺分画症は否定的であった.後天性嚢胞は肺炎をくり返した場合や,結核などで生じる可能性があるが,いずれも病歴から否定的である.

CCAMとは肺の一部が嚢胞状になる良性腫瘍で,気管支閉鎖症を合併するとの報告もあり,気管支閉鎖症と同一スペクトラムの疾患とする概念もある.気管支閉鎖症は,気管支が限局的に閉鎖する疾患である.明確な原因は不明であるが,胎児期の気管支動脈の血流途絶から気管支芽の虚血と瘢痕化が生じるためではないかと考えられている.気管支が限局的に閉鎖することによって,閉鎖部位より末梢の肺には側副路を介して周囲から空気が流入し,肺の限局性過膨張が生じ,粘膜貯留や炎症が合併しうる.本症例のCT画像はその過程をものがたっている.本症例では今後感染をくり返すリスクを説明し,患者の同意が得られたため,診断と治療を目的として,左下葉切除を施行した.病理所見では気管支末梢は嚢胞状に拡張しており,嚢胞間の組織で幼若なものがみられないため,CCAMは否定的で,気管支閉鎖症と診断された.術後経過良好で,術後5日目に退院となった.現在は発症前の日常生活に復帰し,外来にて経過観察を継続している.

図1
図2
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プロフィール

北村淳史(Atsushi Kitamura)
聖路加国際病院 呼吸器内科
山口哲生(Tetsuo Yamaguchi)
新宿海上ビル診療所
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