画像診断Q&A

レジデントノート 2017年4月号掲載
【解答・解説】労作時呼吸困難を認めた80歳代男性

ある1年目の研修医の診断

1年前の胸部単純X線写真にて胸膜に石灰化を認める.来院時の胸部単純X線写真にて左胸水を認め,肺癌や結核を鑑別にあげ胸腔穿刺を行う必要がある.

Answer

悪性胸膜中皮腫(上皮型)

  • A1 :1年前の胸部単純X線写真にて石灰化胸膜斑(図1 )を認める.石綿(アスベスト)曝露が示唆される.
  • A2 :石綿曝露が示唆される背景をもつ患者の左一側大量胸水貯留(図2)である.肺癌による癌性胸膜炎や結核性胸膜炎の可能性があるが,悪性胸膜中皮腫や良性石綿胸水などの石綿関連胸水も鑑別にあげる必要がある.

解説

胸部単純X線像およびCTにて石灰化胸膜斑(図123)が認められる.CTでは胸腔内の腫瘤ははっきりしない.石綿関連疾患であることは明らかである.石綿関連疾患は,① 石綿肺(肺の線維化),② びまん性胸膜肥厚,③ 良性石綿胸水,④ 肺癌,⑤ 悪性胸膜中皮腫に分けて考えられる.このうち,③ 良性石綿胸水は,他疾患を除外して,3年以上の経過を観察できたものとされている.

石綿曝露を示唆する石灰化胸膜斑を認める患者に新出の胸水をみた場合は,本症例のように良性石綿胸水や悪性胸膜中皮腫を鑑別にあげ精査することが重要である.

本症例は,上記疾患も念頭に,胸腔穿刺を施行し鑑別を進める必要がある.胸水の検査では,細胞診classⅡ,抗酸菌を含めた培養陰性,ADA(adenosine deaminase)上昇なく,特異的な診断に至らなかった.石綿関連疾患を鑑別にあげ,局所麻酔下胸腔鏡による胸膜生検の適応と判断した.胸腔鏡にて胸腔内を観察すると,壁側胸膜に多数の白色の石灰化胸膜斑(図4)を認めた.また壁側胸膜は一部に胸膜肥厚を認めた.同部を鉗子にて生検し,病理組織にて悪性胸膜中皮腫(上皮型)の診断となった.タルクにて癒着術を施行し,ペメトレキセドによる抗癌剤治療を継続している.

石綿関連疾患を疑った場合は,過去の石綿を扱う職歴(造船業,建設業,配管工など)の詳細な聴取が必要である.女性であれば夫の職歴聴取も必要である.悪性胸膜中皮腫は,はじめて石綿の曝露を受けてから40年の長い潜伏期間を経て発症する.石灰化胸膜斑は,過去の石綿曝露を示唆し,本症例の胸腔鏡所見のように壁側胸膜に発生する.呼吸機能障害はきたさず,それのみでは病的意義はなく,治療は要さない.ただし石綿曝露歴がある患者の肺癌発生率は通常の数十倍になるとされ,禁煙指導は必須である.

図1
図2
図3
図4
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プロフィール

北村淳史(Atsushi Kitamura)
聖路加国際病院 呼吸器内科
山口哲生(Tetsuo Yamaguchi)
新宿海上ビル診療所
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