画像診断Q&A

レジデントノート 2017年05月号掲載
【解答・解説】激しい腹痛で救急搬送された70歳代女性

Answer

魚骨による腸管穿孔・汎発性腹膜炎

  • A1:魚骨による腸管穿孔・汎発性腹膜炎.小腸は浮腫状で内容物が貯留し,麻痺性イレウスの所見を呈していた.左腸骨窩には腹水(図2)を認め,腸管を穿通する線状の高吸収域像(図12)を認めた.以上より魚骨による腸管穿孔・汎発性腹膜炎と診断した.
  • A2:腹膜炎症状が認められれば,緊急手術が必要であり,内視鏡下手術や開腹術が選択される.穿孔部位を同定できれば,穿孔部の縫合閉鎖でよいと思われるが,術中に魚骨が確認できなかった場合は腸管切除術も考慮される.本症例では,全身麻酔下,腹腔鏡での観察にて穿孔部位は同定できず,開腹手術を行った.魚骨は腹腔内に脱落しており,腹腔内に生理食塩水をためて消化管内部のガスがもれてきた回腸の一部を切除,縫合した.

解説

魚骨による消化管穿孔は決して珍しい病態ではない.

魚骨を嚥下してしまう理由として,口腔内の知覚鈍麻,加齢,義歯装着などがあげられる1).特に本症例のような結婚式などの場合では,鯛など比較的大型の魚の料理が出されることが多く,アルコール摂取も重なるため,比較的高齢者に起こりやすい病態であるといえる.

症状として,急激に発症する腹痛,発熱,腹部膨満がみられる急性炎症型と,緩徐に経過して腹腔内に局所性の膿瘍や肉芽腫を形成する慢性炎症型に分類される1)

魚骨の大部分が組織と水で構成され,カルシウムはごくわずかしか含まれないため,単純X線画像には写りにくく,診断に有用でない2).しかし,2000年以降本邦では,マルチスライスCTの登場もあり,術前に魚骨を疑う線状の高吸収域像が90%以上描出されるようになった1).本症の予後は良好とされるが,高齢者では自覚症状が現れにくく,手術までに時間がかかるため予後は不良である.高齢者では積極的にCT検査を行い,迅速な診断・治療をすることが大事である1)

図1
図2
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参考文献

  1. 末廣眞一:魚骨による消化管穿孔の4例:日本腹部救急医学会雑誌,35:493-496,2015
  2. Goh BK,et al:CT in the preoperative diagnosis of fish bone perforation of the gastrointestinal tract.Am J Roentgenol,187:710-714,2006

プロフィール

原田 圭(Kei Harada)
岡山大学病院 高度救命救急センター
塚原紘平(Kohei Tsukahara)
岡山大学病院 高度救命救急センター
中尾篤典(Atsunori Nakao)
岡山大学病院 高度救命救急センター
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