画像診断Q&A

レジデントノート 2017年06月号掲載
【解答・解説】首の痛みと一過性健忘を認めた70歳代男性

Answer

くも膜下出血

  • A1 :両側のシルビウス裂の構造は不鮮明化しており,同部に血腫が疑われる(図1).右側脳室の三角部には軽度高吸収の構造を認め,同部にも血腫が存在すると考えられる(図2).これらの所見からくも膜下出血と考えられる.同日撮影のMRAにより動脈瘤が証明された(図3).
  • A2 :脳動脈瘤の再破裂の危険性が非常に高く,緊急性がある.

解説

くも膜下出血は多くの症例で強い頭痛を主訴に来院するが,ときに本症例のように軽微な症状で来院することがある.病態としては,脳動脈瘤が非常に微細な破裂をきたした後に止血された状態と推定される.このような脳動脈瘤においては再破裂の危険性が非常に高く,再破裂の場合,一般的なくも膜下出血と同様に転帰は不良である.出血量が微量のくも膜下出血症例では,頭蓋内圧亢進をきたさないことから,症状が軽微なことが多い.

軽微な頭痛や非定型的な神経症状に対する頭部CTの適応については議論があるところとは思うが,本症例のように画像撮影前には全く推測困難な致死的疾病に遭遇することをときに経験する.臨床所見をベースにした診断には限界があり,画像単体の情報から,確実に見落としなく診断することが必須となる.

しかし画像診断の観点からも,このような症例においては,微細な出血が脳脊髄液で希釈されたり,出血から時間が経過していたりすることにより,血腫の吸収値が脳実質と同程度に描出され,診断は困難である.

本症例においては下記の2点が読影のポイントとなる.

正常構造(両側のシルビウス裂構造,図4)を確実に頭に焼きつけ,いつでも確認する.正常の脳CTにおいて,シルビウス裂が不明瞭化していることはすなわち異常である.しかし,“いつもないものがある”は気づきやすいが,“いつもあるもの(シルビウス裂)がない”は気づきにくい.そのため,この見落としを防ぐためには,日々の異常所見がない頭部CTの読影の際も意識的に正常構造を追跡する必要がある.このような読影を日々行うことで,頭部解剖構造のnormal databaseが脳内に蓄積される.

解剖構造は指で追うように連続性を確認する.本症例において,右側脳室三角部に血腫貯留が存在する.しかし,脳実質構造と血腫のコントラスト差が少なく,見落としの原因となりやすい.臓器構造の境界が不鮮明になっている場合には見落としが起こりやすいことが経験的に知られている.これは,ヒトの認知が濃度差よりも線分(構造の違いが導くエッジ)により,全体像を把握していることによる影響が大きい.このため,臓器構造の境界を意識的に指でなぞるように目で追っていくことにより見落としを防ぎやすいと考えられる.

※本原稿は,“ネッティー先生のわかる! 見逃さない!CT読影術/ケアネットDVD”(ケアネット,2015)提示の症例を許可を得て改変したものである.

図1
図2
図3
図4
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プロフィール

関根鉄朗(Tetsuro Sekine)
日本医科大学付属病院 放射線科
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