画像診断Q&A

レジデントノート 2017年7月号掲載
【解答・解説】急性膵炎をくり返し,右上腹部痛を主訴に来院した30歳代男性

Answer

groove pancreatitis(groove領域に限局的に生じる特殊な膵炎の一型)

  • A1:単純 CT で膵頭部近傍に軟部影を認める(図1).一見,膵頭部病変にも見えるが,軟部影左側に胃十二指腸動脈(図2)が走行しており,膵外のgroove領域であることがわかる.
  • A2:軟部影は動脈相では造影効果に乏しいが,門脈相にかけて遷延性に造影される.groove 領域の病変であり,groove膵炎ないし膵癌が鑑別となる.1スライスのみの呈示では厳密な鑑別は困難だが,十二指腸壁に肥厚を認める点,壁内に嚢胞を認める点(図3),周囲への浸潤傾向に乏しい点から,groove pancreatitis を疑った.

解説

groove(溝)領域とは,十二指腸下行脚と膵頭部および総胆管に囲まれた溝状の領域のことをいう(図2).この領域に限局的に生じる特殊な膵炎の一型を groove pancreatitis という.原因は不明であるが,十二指腸壁内の異所性膵組織や副膵管のドレナージ障害などとの関連が示唆されている.

組織学的にはgroove領域に慢性炎症による浮腫,線維化に加え,嚢胞が混在することもある.病変に接する十二指腸壁にはしばしば肥厚や嚢胞を伴う.

造影CT では線維成分を反映し,動脈相では造影効果が乏しく,門脈相にかけて遷延性に造影される.

臨床上問題となるのは,groove 領域に認められる膵癌であるが,鑑別が困難なことも多く,最終的に手術が行われるケースも少なくない.

両者の鑑別において,groove pancreatitis をより疑う所見としては,groove 領域の病変が三日月状シート構造を呈する,十二指腸壁内やgroove 領域内に嚢胞性病変が存在する,十二指腸壁に肥厚が認められる,胆管・膵管の狭小化が平滑かつ長い,などがあげられる.一方でより膵癌を疑う所見としては,後腹膜に浸潤する,胃十二指腸動脈を含む脈管構造の encasement(腫瘍浸潤による不整狭窄)を認める,などがあげられる.

本症例の読影のポイントは下記の2点である.

病変の正確な局在を把握することが肝要である.本症例では胃十二指腸動脈が確認できることから,その腹側は膵臓の外であることがわかる.軟部構造(この場合,膵臓)の連続性を追っていくだけでは境界がわかりにくいことがある.膵臓に限らず,血管構造は臓器境界,腹膜腔-後腹膜境界を弁別するためのメルクマールとして有用である.

病変の性状を正確にイメージすることが重要である.病変は単純CTで軟部濃度を呈し,緩徐に造影増強される造影パターンを示す.このようなパターンを示す構造に線維成分がある.本症例においては,膵炎をくり返していたことから,慢性膵炎に伴い線維化をきたしていたと考えられる.単なる膵炎の脂肪織への炎症波及の場合も単純CTで同様の吸収値を示すが,この場合は滲出液を反映しているので,造影増強効果を伴わない.両者を明瞭に鑑別することで疾患理解が深まる.

図1
図2
図3
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文献

  1. Stolte M,et al:A special form of segmental pancreatitis:“groove pancreatitis”.Hepatogastroenterology,29:198-208,1982
  2. Becker V & Mischke U:Groove pancreatitis.Int J Pancreatol,10:173-182,1991
  3. Irie H,et al:MRI of groove pancreatitis.J Comput Assist Tomogr,22:651-655,1998

プロフィール

安藤嵩浩(Takahiro Andoh)
日本医科大学付属病院 放射線科
関根鉄朗(Tetsuro Sekine)
日本医科大学付属病院 放射線科
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