鳥関連慢性過敏症肺炎(bird related chronic hypersensitivity pneumonitis:BrCHP)に対する治療中に,肺結核症の合併をきたした症例である.胸部単純X線写真上,全肺野にびまん性にすりガラス陰影がみられる.この陰影はBrCHPの診断時とほぼ変わらない.左中肺野と右下肺野に新出の浸潤影を認め,後者は内部に空洞を伴っている.
同日に撮影された胸部単純CTでは,両側肺野に胸膜側優位に広がるすりガラス影,網状影を認めており,その内部に気管支拡張所見や気腫性変化を伴っている.慢性に経過する間質性肺炎の所見である(図2→).また右下葉に空洞を伴う浸潤影を認めている(図2,3→).空洞の形態は不整形ではあるが,周囲に拡張した気管支を伴っており(図2★),また分岐状構造を呈しているため,気管支に由来する空洞であることが推定される.
以上の画像所見,特に気管支の形を模倣した特異な空洞の形態(気管支拡張性空洞)より,肺結核症を強く疑った.入院後,隔離のうえ行った喀痰検査にて,抗酸菌塗抹陽性(ガフキー7号相当)との結果を得,また同検体のPCR検査で結核菌群陽性であり,肺結核症の診断に至った.
空洞を呈する疾患は感染症では,肺結核症,非結核性抗酸菌症,肺化膿症,真菌症が重要である.さらに,非感染性疾患では,肺がん,多発血管炎性肉芽腫症などがあげられる.画像所見における肺結核症とその他の疾患の鑑別においては,空洞周囲の気道散布巣の有無が有用とされ,そのような像がみられた場合診断は比較的容易である.一方,肺化膿症の空洞では,結核性空洞では通常みられない液面形成が認められることがあり,鑑別のポイントとなる.
本例では気管支拡張性空洞が診断のポイントである.結核菌は,気管支病変を多く合併するが,結核菌に侵された気管支は乾酪性変化,潰瘍性変化を伴って内腔が不規則に拡大し,浸潤影の中に気管支拡張性空洞が形成される.本症例のCTでみられる空洞は気管支拡張性空洞の典型例であり,他疾患ではまずみられない肺結核症に特異的な所見である.このような空洞を見出したときは肺結核症を想定して個室隔離など適切な処置をとる必要がある.空洞のある患者は,多量の菌を散布するため周囲への感染のリスクが高く,その意味でも結核性空洞の診断は臨床の現場において重要であり,留意する必要がある.