画像診断Q&A

レジデントノート 2017年12月号掲載
【解答・解説】腹痛と嘔気で救急外来を受診した50歳代男性

Answer

間膜軸性胃軸捻症

  • A1 :胃泡は著明に拡張し,液面形成を認める.また,胃泡は二重に観察される(図1).内側のガスは捻転した前庭部のガスと考えられ,間膜軸性胃軸捻症を考える所見である.右横隔膜下にガス像がみられるが,ハウストラを認め,結腸ガスと考えられる(図1).明らかな遊離ガス像は認められない.
  • A2 :腹部造影CTでも胃は拡張し,液面形成を認める.腹部食道(図2)と前庭部(図2)は交差しており,間膜軸性胃軸捻症と診断される.

解説

胃軸捻症は胃が生理的範囲を超えて回転し,胃内容物の通過障害をきたした状態であり,比較的稀な疾患である.稀な疾患ではあるが,治療が遅れると死亡率は30~50%にのぼるとされ,早期診断が重要である1)

典型的な症状は ① 吐物なき嘔吐,② 強い心窩部痛と上腹部の膨満,③ 胃管挿入困難で,Borchardtの3徴と呼ばれている2).捻転軸により,胃小彎と大彎を結んだ軸で捻転する間膜軸性(短軸性),噴門と幽門を結んだ軸で回転する臓器軸性(長軸性)および複合型に分類される(図3).発症の原因は特発性と続発性に分けられる.特発性は胃を固定する間膜の弛緩が原因と考えられており,続発性は他臓器の解剖学的異常(遊走脾など),食道裂孔・横隔膜ヘルニア,横隔膜弛緩や横隔神経麻痺が原因といわれている.胃軸捻症の70%を続発性が占めるとされている3)

間膜軸性胃軸捻症の腹部単純写真所見は胃底部と前庭部の液面形成および二重胃泡が典型的とされている.拡張した胃の頭側に,前庭部の空気が帽子のように認められることがあり,空気帽徴候(air cap sign)と呼ばれ,本症の特徴的な所見とされる4).CTでは拡張した胃に惑わされずに丹念に解剖を把握することが肝要である.腹部食道と前庭部が交差していることが確認できれば間膜軸性胃軸捻症と診断できる.間膜軸性胃軸捻症では腸間膜も捻転するため,胃脾間膜のけん引による脾臓や膵体尾部の内側への偏移が副所見として認められる.また,腸間膜内を走行する血管も偏移するため,造影CTを行うことにより左胃動脈と右胃動脈の交差が観察されることがあり,診断の一助となる.

図1
図2
図3
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文献

  1. Smith RJ:Volvulus of the stomach. J Natl Med Assoc, 75:393-397, 1083
  2. Borchardt M:Pathologie und Therapie des Magen Volvulus. Arch Klin Chir, 74:243-260, 1904
  3. Wastell C, et al:Volvulus of the Stomach. A Review With a Report of 8 Cases. Br J Surg, 58:557-562, 1971
  4. 「ここまでわかる急性腹症のCT 第2版」(荒木 力/著),メディカル・サイエンス・インターナショナル,2009

プロフィール

齊藤英正(Hidemasa Saito)
日本医科大学付属病院 放射線科
関根鉄朗(Tetsuro Sekine)
日本医科大学付属病院 放射線科
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