画像診断Q&A

レジデントノート 2017年12月号掲載
【解答・解説】健診にて胸部異常陰影を指摘された60歳代女性

ある1年目の研修医の診断

胸部X線写真にて左上肺外側に結節を認める.肺癌や中皮腫などを考えて胸部CTを撮影する必要がある.

Answer

多発性骨髄腫(肋骨病変合併)

  • A1 :左上肺外側にextrapleural sign陽性の腫瘤を認める(図1).
  • A2 :胸壁腫瘤などの肺外の病変を疑い,胸部CTで病変を確認するとともに,確定診断目的に生検を考慮する.

解説

胸部X線写真にてextrapleural sign陽性であり(図1),肺外の病変であることは明らかである.胸部CTでは一部肋骨の骨皮質を破壊,融解して肋骨周囲に腫瘤を形成していることがわかる(図2).同部位に好発するものとして神経鞘腫があるが,良性腫瘍であるため,骨皮質を破壊,融解することはなく,同疾患は否定的である.昨年の健診胸部X線写真では異常は指摘されず,1年間で新出している病変であること,骨皮質を破壊,融解していることから,何らかの悪性疾患を考慮すべきであり,肺癌の骨浸潤,転移性骨腫瘍,骨原発腫瘍,骨髄腫などを鑑別にあげる必要がある.

本症例ではまず原発巣の検索目的にPET検査を行った.PET検査では上腕,大腿骨に多発性の集積を認めた.胸部,腹部臓器に原発巣を疑わせる集積は認められなかった.骨髄腫の検索目的に免疫グロブリンや軽鎖グロブリン,Bence Jonesタンパク(BJP)などを測定し,IgG,IgA,IgMの低下と,κ鎖の上昇,尿中BJP陽性を認めた.血液内科にコンサルトし,腸骨より骨髄穿刺,生検を施行し,多発性骨髄腫(κ型)の診断となった.

多発性骨髄腫は形質細胞性腫瘍の1つである.腫瘍細胞は主に骨髄で増殖し,その特徴は骨髄中に種々の程度に異常形質細胞が認められること,血清中あるいは尿中に骨髄腫瘍細胞が産生するMタンパクが証明されることである.また,Mタンパクの種類によりIgG型,IgA型,IgD型,IgE型,BJP型の5型に分類される.病的骨折による背部痛や貧血による倦怠感などの症状を伴うことが多いが,病初期の場合は本症例のように無症状のこともある.

本症例は,その後血液内科にて化学療法を施行した.

本症例は骨融解の所見より当初から骨髄腫を疑ったために,比較的侵襲の少ない血液,尿検査,骨髄穿刺,生検で診断に至り,侵襲的な経胸壁生検を回避することができた.

図1
図2
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プロフィール

北村淳史(Atsushi Kitamura)
聖路加国際病院 呼吸器内科
山口哲生(Tetsuo Yamaguchi)
東京メディサイトクリニック
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