胸部X線写真(図1)にて左中肺野に浸潤影を認める.市中肺炎などを考え,CT撮影する必要がある.
胸部X線写真(図1)にて,左中肺野に浸潤影を認める(◯).市中肺炎の可能性もあるが,既往に乳癌の放射線治療歴があり,まず第一に乳癌放射線治療後の器質化肺炎を鑑別にあげたい.CT(図2)では左上葉S3を中心に浸潤影(◯)が広がり,気管支透亮像が明らかである.また周囲にすりガラス影(◯)を伴っている.浸潤影が照射側に一致して非区域性に出現しており,乳癌放射線治療後の器質化肺炎と診断した.
乳癌放射線治療後の2.3%に器質化肺炎を発症したとの報告1)もあり,本疾患は決して稀な疾患ではない.自然に消退する場合があり,自覚症状を伴わない場合は,経過観察する場合もあるが,自覚症状を伴う場合は,ステロイド治療の適応である.対側肺に出現する場合や部位を変えて再発する場合もある.本症例は自覚症状を伴って発症しており,ステロイドによる治療の適応と判断し,プレドニゾロンを0.5 mg/kg/日で投与し,すみやかに自覚症状と陰影の改善を得た(図3).その後2週間ごとに-5 mgずつ減量とし中止した.ステロイド中止後も再燃なく経過している.
乳癌患者は増加傾向にあり,本疾患に遭遇する可能性もますます増えていくものと思われる.