画像診断Q&A

レジデントノート 2018年8月号掲載
【解答・解説】呼吸困難,乾性咳嗽を主訴とした60歳代男性

Answer

清心蓮子飲による薬剤性肺炎の1例

  • A1 :胸部X線像では両側広範囲に上肺野優位の浸潤影がみられる(図1).胸部CT像ではすりガラス影優位であり,一部に浸潤影がみられる.小葉間隔壁の肥厚も目立つ(図2).
  • A2 :臨床像の類似した肺炎をくり返していることから,原因と考えられる病歴を徹底的に聴取する.
  • A3 :被疑薬を中止する.呼吸不全が進行する場合はステロイドを投与する.

解説

本症例は排尿困難の際に頓服していた清心蓮子飲が原因と考えられる肺炎である.臨床像の類似した肺炎をくり返していること,喀痰グラム染色で有意な菌を認めなかったことから,細菌性肺炎ではなく,必ず原因と考えられる病歴があると考え,徹底的に聴取した.くり返す肺炎の原因として,過敏性肺炎など吸入抗原による肺炎,Mendelson症候群,外因性リポイド肺炎,防水スプレー吸入による肺障害など有害物質の吸入による肺炎,薬剤・サプリメントなどによる肺炎が考えられる.

本症例では初回入院時も再入院時も呼吸困難,乾性咳嗽が出現する約1週間前から清心蓮子飲を頓服しており,原因薬剤と推定した(初回入院時には清心蓮子飲の内服歴は聴取できていなかったため,原因不明のアレルギー性肺炎と診断していた).入院後内服薬をすべて中止し,気管支鏡検査を予定した.しかし,第2病日に呼吸状態が悪化し,ステロイドを投与した.肺炎はすみやかに軽快し,第20病日に退院した.清心蓮子飲に対する薬剤リンパ球刺激試験(drug lymphocyte stimulation test:DLST)は,ステロイド内服中は陰性であったが,ステロイド中止後に309%と陽性になった.臨床経過,DLSTの結果から総合的に清心蓮子飲による薬剤性肺炎と診断した.

清心蓮子飲は黄芩,麦門冬,茯苓,車前子,人參,黄耆,甘草,蓮肉,地骨皮よりなる処方である.漢方薬による薬剤性肺炎の94%が黄芩含有方剤を原因とすると報告されており,漢方薬による薬剤性肺炎の発症において黄芩の関与が大きいと考えられている.清心蓮子飲による薬剤性肺炎は7例報告されている.

本症例は,清心蓮子飲が排尿困難に有効であったものの,副作用が出た1例である.肺炎像がみられる場合は,薬剤性肺炎の可能性も念頭におき,入院時に詳細な薬剤投与歴を確認することが日常診療上重要であると考える.

図1
図2
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文献

  1. 豊嶋幹生,他:清心蓮子飲による薬剤性肺炎の1例.日呼吸会誌,46:31-34,2008
  2. 横村光司,他:清心蓮子飲による薬剤性肺炎の2例.アレルギー,58:1441-1446,2009

プロフィール

芳賀高浩(Takahiro Haga)
東京都立松沢病院 精神科
山口哲生(Tetsuo Yamaguchi)
東京メディサイトクリニック
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