画像診断Q&A

レジデントノート 2018年11月号掲載
【解答・解説】嘔気,嘔吐および腹痛で受診した10歳代男性

ある1年目の研修医の診断

小腸に腸重積像を認めますので,消化器外科に緊急手術を依頼します.

Answer

腸重積(小腸小腸型).

  • A1:腸管内に嵌入する腸管腸間膜を認める(図1図2).
  • A2:腸重積(小腸小腸型)
  • その後の経過:緊急手術が行われ,小腸全体が検索されたが,腸重積を認めなかった.腸重積の原因となりうるMeckel憩室や腫瘤などは認めなかったが,腸間膜に腫大リンパ節を触知した.

解説

腸重積とは口側の腸管が肛門側の腸管に嵌入する病態である.稀に肛門側の腸管が口側の腸管に逆行性に嵌入することもある.腸重積が生じると,腸管内腔が狭小化するため通過障害が生じる.また腸間膜内の血管が圧迫され,血流障害から腸管壊死に進展することもある.腸間膜とともに入り込んだ腸管をintussusceptum,受け手側の腸管をintussuscipiensという.主な症状は,血流障害による腹痛,血便,腸閉塞による嘔吐である.腸重積は部位により,小腸小腸型(enteroenteric type),回腸結腸型(ileocolic type),回腸盲腸型(ileocecal type),結腸結腸型(colocolic type)に分類される.

腸重積の5%は成人,95%は小児に発症する.小児例の多くは1歳以下の乳幼児に回腸結腸型の腸重積として発症する.成人の腸重積では先進部となる器質的疾患を伴う頻度が高い.具体的にはMeckel憩室,重複腸管などの先天性疾患,良性腫瘍,悪性腫瘍,異所性膵組織,虫垂炎,腸炎,吻合部,異物,イレウス管などが先進部となりうる1).本症例では何らかの腸炎に伴う腸管壁肥厚と腫大した腸間膜リンパ節が腸重積の発症に関与していたと考えられる.なお,IgA血管炎の小腸病変に伴う腸重積が知られているが,臨床経過から本症例では否定的であった.

画像診断では観察する断面により所見が異なる(図3).短軸方向では腸管が同心円状に描出されるtarget sign(図3A),嵌入した腸管と辺縁の腸間膜組織が描出されるcrescent in doughnut sign (図3B),長軸方向では腸管と腸間膜が平行に認められるpseudo-kidney signやsausage patternが認められる(図3C).読影に際しては口側腸管の拡張(腸閉塞)や重積腸管の造影効果(腸管虚血)および重積部の腫瘤性病変(先進部)の有無を評価する.

蠕動運動に伴い生理的な小腸重積を生じることも知られている.画像検査で偶然に生理的な小腸重積が発見されることもあり,対応に苦慮することがある.過去の報告では,口側腸管の拡張を伴わない無症状の空腸重積はself-limitingであり2),無症状,重積腸管が3.5 cm以下,腸閉塞がない,先進部がない小腸重積では,小腸造影やCT enterographyなどで先進部となる病変を検索することが推奨されている3).本症例では開腹時には腸重積が自然整復されており,結果的に手術は不必要であったかもしれない.ただし,術前には腸管虚血によると考えられる強い腹痛を認めており,経過観察中に腸管虚血へ進行した可能性も考えられ,判断に苦慮する症例であったといえよう.

おまけ

紙面掲載図1,2とは別のスライスにはもう1カ所腸重積があります.探してみてください.答えはこちら

図1
図2
図3
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文献

  1. Kim YH, et al:Adult intestinal intussusception:CT appearances and identification of a causative lead point. Radiographics, 26:733-744, 2006
  2. Catalano O:Transient small bowel intussusception:CT findings in adults. Br J Radiol, 70:805-808, 1997
  3. Jain P & Heap SW:Intussusception of the small bowel discovered incidentally by computed tomography. Australas Radiol, 50:171-174, 2006

プロフィール

井上明星(Akitoshi Inoue)
東近江総合医療センター 放射線科
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