画像診断Q&A

レジデントノート 2019年2月号掲載
【解答・解説】転倒後の手関節痛で来院した10歳代男性

Answer

舟状骨骨折

  • A1 :橈骨遠位端骨折,手根骨骨折を念頭に診療を行う.
  • A2 :単純X線写真で明らかな骨折線は認めないが受傷機転や身体所見より舟状骨骨折を疑い,追加単純X線写真,CT(図2)やMRI検査(図3)を行う.
    追加の単純X線写真では尺屈位撮影,45°回内位撮影でもはっきりした骨折線を認めず,CTでも明らかな骨折線を認めなかった(図2).
    しかし,舟状骨腰部にSTIR強調画像で高信号,T1強調画像で低信号の信号変化を認めたため,舟状骨骨折と診断した.

解説

舟状骨骨折は手根骨骨折のなかで最も頻度が高く,60~90%を占めるとされている.そのなかでも最も多いのが舟状骨腰部の骨折である.好発年齢は青壮年期であり,スポーツ外傷や転倒などの比較的低エネルギー外傷でも発症する.本症例は年齢,受傷機転,主訴,骨折部位などから典型的な例といえる.舟状骨骨折は受傷初期の段階では,ほかの骨折と比較し疼痛が軽微であり,患者本人が骨折と気がつかず受診が遅れることがある.

診断は単純X線写真にてなされるが,通常の2方向撮影のみでは骨折線の判断が困難なことが多い(図1).そのため舟状骨骨折を疑った場合は手関節尺屈位の前後方向撮影,45°回内位での撮影,手関節軽度背屈位での前後方向撮影も同時に行うことが推奨されている.しかしながら単純X線写真のみだと感度が70%という報告もあり,診断がつかない場合はCTやMRI撮影を行う.CTにおける感度は95%と報告されているが,CTでも骨折線が見つからなければ不顕性骨折を疑いMRIを撮影する.MRIでは骨折部位がT1強調画像では低信号,STIR強調画像で高信号に描写される(図3).本症例でも単純X線写真,CTで骨折線は明らかでなく,MRIにて確定診断がついた.

治療が遅れた場合,遷延癒合や偽関節,近位骨片の無腐性壊死が起きる可能性もあり,診断には注意を要する.また,舟状骨の血流は遠位部から近位部に流れており,近位部の方が流量が少ないといった特徴がある.そのため近位部の骨折では骨癒合が遅れやすく,偽関節となりやすい傾向にある.本症例はMRIにより早期診断・早期治療介入により合併症なく骨癒合が得られた.

小児期~成長期の症例で橈骨遠位端骨端線の残存を認める場合,骨端線損傷の鑑別目的に健側単純X線写真を撮ることが望ましい.

図1
図2
図3
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参考文献

  1. 「骨折・脱臼 第4版」(冨士川恭輔,鳥巣岳彦/編),南山堂,2018
  2. Jørgsholm P, et al:The benefit of magnetic resonance imaging for patients with posttraumatic radial wrist tenderness. J Hand Surg Am, 38:29-33, 2013

プロフィール

小出恭大(Yasuhiro Koide)
岡山大学病院 卒後臨床研修センター
山川泰明(Yasuaki Yamakawa)
岡山大学病院 高度救命救急センター
中尾篤典(Atsunori Nakao)
岡山大学病院 高度救命救急センター
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