画像診断Q&A

レジデントノート 2019年3月号掲載
【解答・解説】咳嗽,胸痛を主訴に来院した20歳代男性

Answer

肺結核症(粟粒結核,結核性肺炎)

  • A1:胸部単純X線写真(図1)では右中肺野に浸潤影があり,下方は上中葉間胸膜で明瞭に境されている.また,よく見ると周囲の肺野に多数の粒状影が認められる.胸部CT(図2)では,右上葉肺門側優位に不整形の塊状影,浸潤影およびその周囲にすりガラス陰影を認め,さらに両肺野に大小不同の粒状影が散布されている.また,縦隔条件では著明な肺門・縦隔リンパ節腫大を認める.
  • A2:肺結核症(粟粒結核,結核性肺炎)を考える.経過からは細菌性肺炎も否定はできず,また悪性リンパ腫も鑑別にあがる.年齢を考慮しなければ肺癌もこのような画像をとりうる.これらの鑑別のために気管支鏡検査を行い,気管支洗浄,経気管支肺生検などを行う.血液学的にIGRA(interferon-γ release assay:インターフェロンγ遊離検査),腫瘍マーカーなども調べる.

解説

胸部単純X線写真では主病変として右中肺野の浸潤影を認め(図1),上中葉間胸膜で境されていることから,上葉に区域性に広がる病変と推定される.さらに全肺野に粒状影が散布されている(画像を拡大しないと認め難い).また気管の右側の縦隔が張り出しており,縦隔リンパ節腫大が疑われる(図1).胸部CT検査では,右肺上葉の肺門部周囲に塊状影・浸潤影があり,さらに周囲には濃淡のある汎小葉性のすりガラス陰影がある.また,両肺野に大小不同の粒状影が多発している(図2A).縦隔条件では著明な肺門・縦隔リンパ節腫大を認め(図2B),その内部はlowで,壊死が疑われる.

上記の所見のなかでも,特に両肺野の粒状影と縦隔リンパ節腫大から,リンパ節腫大を伴う粟粒結核(一次結核症),および結核性肺炎を第一に考える.病歴においても,潰瘍性大腸炎に対してTNF阻害薬インフリキシマブが投与されていることから,結核の発病リスクが予測される.鑑別として,通常の細菌性肺炎では,浸潤影の周囲に粒状影を呈することや縦隔リンパ節の腫大を認めることはまれである.周囲の小結節,肺門・縦隔のリンパ節腫大から悪性リンパ腫も鑑別にはあがるが,このような急性の臨床症状を呈することは少ない.肺癌は年齢からほとんど考えられないが念頭には置く.

結核症の成立機序は複雑である1).結核菌が肺胞に到達し,局所に初期病巣を形成,さらにリンパ路を経由してリンパ肺門,縦隔に達する.このなかの2〜3%がそのまま進展して一次結核症として発病する.その後,菌はリンパ路から血流に乗り散布され,肺尖部に肉芽種性病変を形成するが,その後大部分は生涯安定してそのままである.しかし一部(5%程度といわれる)の患者でこれらの病巣が活動を再開する.これが二次結核症(内因性再燃)であり,われわれが臨床現場でみる肺結核症の大部分が二次結核症と考えられる.一次結核症の画像上の特徴として,浸潤影のほかにすりガラス陰影,縦隔リンパ節腫大などを認めることが多い.また,一次結核症と二次結核症のいずれにおいても,結核菌が血行性に全身に散布されると粟粒結核となる.

本症例では,肺門周囲の浸潤影の周囲にすりガラス陰影と縦隔リンパ節腫大があり,一次結核症の結核性肺炎に合致する所見である.また両肺野にびまん性に大小不同の粒状影が多発しており粟粒結核の所見もある.これらの所見より,本症例は生物学的製剤治療中の患者に起こった初感染結核に引き続いて生じた肺結核症と考えられる.

図1
図2
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文献

  1. 「画像と病理から学ぶ 結核・非結核性抗酸菌症」(徳田 均, 他/著), 克誠堂出版, 2016

プロフィール

結城将明(Masaaki Yuki)
東京山手メディカルセンター 呼吸器内科
徳田 均(Hitoshi Tokuda)
東京山手メディカルセンター 呼吸器内科
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