画像診断Q&A

レジデントノート 2019年5月号掲載
【解答・解説】間質性肺炎の治療中,酸素化能の低下をきたした70歳代男性

Answer

特発性器質化肺炎治療中に合併した慢性血栓塞栓性肺高血圧症

  • A1:胸部単純X線写真では両上肺野にスリガラス影,左下肺野に浸潤影を認め,左肺野の容積は低下している.
  • A2:胸部単純X線写真の所見に不釣り合いな酸素化能の低下がみられる.このような場合は鑑別から喘息やCOPDが除外できれば,酸素化能低下の原因として肺循環系の異常を考慮する.

解説

胸部単純X線写真では両上肺野にスリガラス影,左下肺野に浸潤影を認め(図1),左肺野の容積は低下している.これは間質性肺炎(特発性器質化肺炎)に合致する所見である.ここで臨床的に重要なことは,画像所見の異常の程度に比べて酸素化能が著しく低いことである.もちろん,基礎疾患に喘息やCOPDがあればこの画像所見でも低下を十分説明できるが,本症例では病歴聴取や身体所見からそれらの関与は否定された.その場合には原因となる病態として肺循環系の異常を考えるべきである.肺循環系の異常は胸部単純X線写真や胸部単純CTでは描出されにくいため見落とされがちだが,画像所見と酸素化能の乖離を認めた際には常にこの病態を意識すべきである.高度の酸素化能の障害をきたす肺循環系の異常としては,急性肺血栓塞栓症,慢性血栓塞栓性肺高血圧症(chronic thromboembolic pulmonary hypertension:CTEPH),血管内リンパ腫,pulmonary tumor thrombotic microangiopathy(PTTM),などがあげられる.特に前者2つは適切な治療により病態の改善が得られるため見逃してはならない疾患である.

本症例の入院時の胸部単純CTでは器質化肺炎を思わせる斑状の浸潤影に加えて,モザイクパターンのスリガラス影がみられた(図2).CTにて肺野にモザイクパターンを認めるのは,air trapを生じる気道病変が存在するときと,今回のような肺循環系疾患のときであり,なかでもCTEPHではよく認める所見である.また肺門部の縦隔条件CTで肺動脈が大動脈より太い(図3)ことから,肺高血圧の存在が示唆され,身体所見からも右心不全が疑われたためCTEPHを第1に疑った.その後造影CTを行ったところ,肺動脈内にCTEPHに特徴的な壁在血栓を認めた(図4).また,右心カテーテル検査でも平均肺動脈圧43 mmHgであり,CTEPHと診断確定した.その後,抗凝固療法を開始し,リオシグアトも導入したが病態の改善にはいたらず,バルーン肺動脈形成術(balloon pulmonary angioplasty:BPA)を施行.徐々に酸素化の改善が得られている.

CTEPHはニース分類で4群に分類される肺高血圧症であり,器質化した血栓により肺動脈が閉塞し,肺血流分布ならびに肺循環動態の異常が6カ月以上にわたって続いている病態である1).近年,本病態が広く認識され,患者数は増加している.以前は診断がついたとしても効果の乏しい薬物治療もしくは侵襲度の高い外科手術しかなく治療が困難であったが,近年は日本を中心にBPAが施行されるようになり,高齢の患者でも適切な治療により改善が見込める疾患となったため,正確に診断し,適切な治療を行うことが重要である2)

図1
図2
図3
図4
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文献

  1. Simonneau G, et al:Updated clinical classification of pulmonary hypertension. J Am Coll Cardiol, 62:D34-D41, 2013
  2. Ogawa A, et al:Balloon Pulmonary Angioplasty for Chronic Thromboembolic Pulmonary Hypertension:Results of a Multicenter Registry. Circ Cardiovasc Qual Outcomes, 10:doi:10.1161/CIRCOUTCOMES.117.004029, 2017

プロフィール

茂田光弘(Mitsuhiro Moda)
東京山手メディカルセンター 呼吸器内科
徳田 均(Hitoshi Tokuda)
東京山手メディカルセンター 呼吸器内科
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