画像診断Q&A

レジデントノート 2019年6月号掲載
【解答・解説】free airを認めるも無症状の70歳代男性

ある1年目の研修医の診断

free airがあるのなら,消化管穿孔でしょう.でも無症状なんて….

Answer

良性腸管気腫症

  • A1:腹部単純X線写真では上行結腸が空気の濃度で拡張.空気は内腔だけでなく壁内に存在(図1).腹部単純CTでは上行結腸から横行結腸にかけて壁内ガスが著明(図2B図3).
  • A2:経過観察.

解説

皆さんは腸管の壁内ガスを所見として認める腸管気腫症(benign pneumatosis intestinalisなど呼称は複数)にどのようなイメージがあるだろうか.致死的なイメージをもっているなら,それは間違っていない.腸管気腫症は基本的には消化管壁に感染や虚血などによって壊死が起こることで生じる.その原因疾患として上腸間膜動脈閉塞症,非閉塞性腸管虚血(non occlusive mesenteric ischemia:NOMI),絞扼性腸閉塞などがあり,いずれも致死的な疾患である.

しかし,なかにはほとんど症状がなく自然に軽快する良性腸管気腫症も存在し,日常的に多くの患者の腹部CTが撮影される今日では,偶然発見され観察される機会も増えている.一方,現在まで良性腸管気腫症の発症機序は解明されていない.所見としては腸管壁内にガスが認められ,その一部は血流に乗り門脈ガスとなって肝内でも認められるが,高度の場合は本例のようにfree airが認められることもある.危険因子は多岐にわたり,慢性閉塞性肺疾患(chronic obstructive pulmonary disease:COPD)や喘息,αグルコシダーゼ阻害薬やステロイド,免疫抑制薬,分子標的薬の使用などが知られるが基本的には無治療で問題ない.

画像診断では,単純X線写真やCTで消化管の内腔ではなく壁内にガスが存在することを見抜く必要がある.CTでは周囲の脂肪濃度や内腔のガスとの鑑別のために肺野条件や骨条件にすると見やすいことが多い.重篤な原因疾患がある場合と比較して周囲の脂肪織混濁がない点や,ほかの原因疾患を積極的に疑う所見がない点など,いくつかのポイントはあるものの,画像では鑑別が容易ではない症例も多く,最終的には患者の症状や全身状態,血中の乳酸値などから判断されることが一般的である.

本例を通して強調したいのは「よくみるから今回の腸管気腫症もきっと良性のものだろう」と,まるでオオカミ少年の物語のように決めつけないことだ.残念ながら,画像診断での絶対的な鑑別法は存在しない.CTなどで腸管気腫症を見た場合,まずは鑑別となる重篤な原因疾患の可能性を考え存分に焦っていただきたい.

図1
図2
図3
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文献

  1. Goyal R, et al:Clinical and imaging features indicative of clinically worrisome pneumatosis:key components to identifying proper medical intervention. Emerg Radiol, 24:341-346, 2017
  2. Lee KS, et al:Distinguishing benign and life-threatening pneumatosis intestinalis in patients with cancer by CT imaging features. AJR Am J Roentgenol, 200:1042-1047, 2013

プロフィール

山内哲司(Satoshi Yamauchi)
奈良県立医科大学 放射線科・総合画像診断センター
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