画像診断Q&A

レジデントノート 2019年6月号掲載
【解答・解説】交通外傷で搬送された60歳代男性

Answer

両側発育性股関節形成不全,股関節高位脱臼

  • A1:原臼蓋から大腿骨が脱臼した状態(図1)のままでの大腿骨頸部・骨頭の形成不全が認められ,発育性股関節形成不全(先天性股関節脱臼)と考えられる(図23).
  • A2:経過観察.

解説

本症例は発育性股関節形成不全(先天性股関節脱臼)により,寛骨臼蓋部および大腿骨頸部から骨頭部分の形成不全をきたした症例と考えられる(図2).脱臼の程度はCrowe分類Ⅳの高位脱臼と診断した1)図3).変形や疼痛が強く,ADLに障害を認める症例においてはTHA(total hip arthroplasty:全人工股関節置換術)が適応となる.しかし,本症例は歩行の不安定性はあるものの長年同様の歩容でADLを維持しており,また疼痛などもないことから特に治療介入は必要なく経過観察とした.高位脱臼したまま長期放置された例では筋短縮により原臼蓋への整復が困難となるため,大腿骨短縮骨切りを併用したTHAが必要となる.

発育性股関節形成不全は,臼蓋に対する大腿骨頭の位置異常,すなわち脱臼・亜脱臼・寛骨臼形成不全などにより,股関節が正常に発育していない状態を指す総称的な疾患名である.成人期以降では変形性股関節症の原因となりうる.本邦では二次性変形性股関節症のうち,本疾患が占める割合は約80%とされている2)

また,本疾患は早期発見・早期治療が重要であり,乳児健診でスクリーニングが行われている3).特徴的な所見は,新生児期の股関節開排制限やクリックサイン,乳児期にはこれらに加えて大腿皮溝の非対称,Allis徴候,患側の下肢短縮,それ以降では歩行開始の遅れやTrendelenburg跛行などである4).これらの身体所見に加え,超音波やX線像などの画像評価を行い診断する.

早期発見であるほど保存的治療で治癒が期待できる.軽症例では新生児期であれば厚めのおむつをはかせて開排位にすることで自然整復が可能である.また育児法によりある程度の予防が可能であり,早期発見に並行して予防に努めることが重要である.具体的には,赤ちゃんの自然な肢位であるM字型に開排した姿勢をとれるよう,コアラ抱っこ,余裕のあるおむつや衣服の選択,顔の向き癖の防止・矯正などが推奨されている.乳児期以降ではリーメンビューゲルによる整復を行い,治癒しなければoverhead traction(体上牽引)を試みる.保存的治療で整復されない症例や幼児期以降など歩行開始後に診断された症例では手術の適応となる.

図1
図2
図3
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文献

  1. Crowe JF, et al:Total hip replacement in congenital dislocation and dysplasia of the hip. J Bone Joint Surg Am, 61:15-23, 1979
  2. 「日本整形外科学会診療ガイドライン 変形性股関節症診療ガイドライン2016 改訂第2版」(日本整形外科学会,日本股関節学会/監,日本整形外科学会診療ガイドライン委員会,変形性股関節症診療ガイドライン策定委員会/編),南江堂,2016
  3. 日本小児整形外科学会:公開資料 乳児健康診査における股関節脱臼二次検診の手引き.2017
  4. 金子浩史,他:関節疾患に伴う跛行とその対策.「特集 こどもの歩容異常(跛行)と成人の跛行」Monthly Book Orthopaedics,28:19-26,2015

プロフィール

有吉雪乃(Yukino Ariyoshi)
岡山大学病院 高度救命救急センター
山川泰明(Yasuaki Yamakawa)
岡山大学病院 高度救命救急センター
中尾篤典(Atsunori Nakao)
岡山大学病院 高度救命救急センター
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