画像診断Q&A

レジデントノート 2019年7月号掲載
【解答・解説】腹痛・嘔気を訴える30歳代女性

ある1年目の研修医の診断

骨盤内に非常に高濃度なものがたまっているように見えます.腹痛もあるし,高濃度なので出血でしょうか.

Answer

油性造影剤による腹膜炎

  • A1:骨盤内に金属のような非常に高濃度の物体が多数認められ,周囲には脂肪織濃度の上昇も伴っている.
  • A2:卵管造影検査で使用した油性造影剤による腹膜炎.

解説

初診患者に既往歴を尋ねることは必須であるが,全員がすべてを隠さず話してくれるとは限らない.検査で妊娠が判明することもあるし,画像などから隠されていた既往歴が発覚することもある.

図12で,骨盤内にキラキラと光り輝く高濃度の物体は,不妊に悩む女性などに対して行われる卵管造影検査の際に使用され腹腔内に残存した油性造影剤である.頻度は高くないが,この油性造影剤が腹膜炎の原因となるケースが存在する.今回提示したCT画像はやけに見にくいと感じなかっただろうか.CTは情報量が多くさまざまな疾患に有用だが,弱点もある.その1つは,金属のような非常に高濃度のものがあった場合にアーチファクトが生じ,その周囲が極端に見にくくなる点である.このような画像では,諦めずにその隙間から確認できる所見(脂肪織混濁や腹膜の肥厚)を丁寧に読影する必要がある.

また撮影範囲を決定する目的で,事前に単純X線写真のようなスカウト画像(施設により呼称は異なる)が撮影されているが,今回の症例もこのスカウト画像を見ると,どこかで見たことがある卵管造影後だと想起できる人もいるだろう(図3).CTを読影する際には必ずこのスカウト画像も確認する習慣をもってほしい.決して情報量は多くないが,その患者の全体像を見ることができ,ときに有用である.

今回の症例では,CTを撮影する前に卵管造影検査歴を確認できていなかった.同席している家族に対して患者本人が隠していたことかもしれないし,もし既往歴を聴取する際に「今までに何か大きな病気をされたことはありますか」という質問をしていたとすれば,その医師に対して不妊治療のことを話さないのは普通かもしれない.不妊治療だけでなく,過去の比較的大きなケガを「病気」と考えずに話してくれない人や,3日前に検診で胃透視をしたことを話す必要がないと考える人もいる(例えばバリウムが消化管内に残っていれば強い金属アーチファクトが発生する).医療従事者と患者の間にはこのような認識のギャップは多数存在するが,すべてを根掘り葉掘り病歴聴取するのも限界があるため,画像も含めたあらゆる角度から患者の情報を収集していくという姿勢が,日常診療でも重要である.

ちなみに,当然ではあるが,CTで観察される濃度は,あくまで物質・構造ごとのX線の透過や吸収の程度を見たものに過ぎず,ものの「硬さ」とは無関係である.

図1
図2
図3
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プロフィール

山内哲司(Satoshi Yamauchi)
奈良県立医科大学 放射線科・総合画像診断センター
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