画像診断Q&A

レジデントノート 2019年7月号掲載
【解答・解説】慢性咳嗽,胸部異常陰影で受診した40歳代女性

ある1年目の研修医の診断

右上肺野に結節影・粒状影を認めます.慢性の抗酸菌感染症を考えますが,結核症にしては肺尖分布ではないので,非結核性抗酸菌症でしょうか? それにしては中葉に影がないですね.

Answer

非結核性抗酸菌症の1例

  • A1:右上肺野胸膜側に,大小の結節影を認める(図1図2).
  • A2:非結核性抗酸菌症を考え,喀痰検査,MAC抗体検査,胸部CT検査を行い,結果に応じて気管支鏡検査を考慮する.

解説

非結核性抗酸菌症(nontuberculous mycobacteriosis:NTM症),M. avium complex(MAC)感染症の症例である.慢性の経過や,上肺野優位に結節影・粒状影を認める画像所見から,結核を含める抗酸菌感染症を疑うが,中葉舌区にも同様の病変を認めるためNTM症を第一に考える.

非結核性抗酸菌は自然環境中の水系・土壌中や,水道・貯水槽などの給水システムなどに広く棲息しており,菌を含んだ埃や水滴を吸入することにより感染すると推定されている.わが国では,Mycobacterium aviumMycobacterium intracellulareを含むMACが肺NTM症の起因菌として最も頻度が高く80~90%を占める.診断基準は,本症に相当する病変を胸部画像で認め,喀痰検査にて2回培養陽性,あるいは気管支鏡検査検体で培養陽性であれば診断確定となる.肺NTM症は近年わが国で増加傾向にあり,2014年の全国アンケート調査にて罹患率は14.7/10万人と非常に高いことが明らかになった1).その後もこの傾向は続き,結核罹患率の順調な低減もあって,今や肺結核(菌陰性も含む)を上回る罹患状況と推定されている.

MACが原因の肺NTM症である肺MAC症はその画像所見から2つの病型に分類される.線維空洞型は,上肺野に好発し,高齢の男性に多いとされる.進行性かつ難治性であることが多く,診断されれば直ちに化学療法の適応となる.一方結節・気管支拡張型は,中高年の女性に好発し,中葉舌区主体の気管支拡張に加えて,その周囲あるいは離れた部位に結節影・粒状影の散布を見ることからこの名がある.長期間にわたってほとんど進行しないものから,着実に進展拡大するものまでさまざまであり,症状と画像所見,その推移に基づいて,治療開始時期が決定される.

本症例の胸部単純X線写真では,右上肺野胸膜側に複数の結節影の集合を認める(図1).胸部CTでは,右上葉胸膜側に散布性の結節影・粒状影を認める(図2).中葉舌区にもごく軽度の気管支拡張および結節影・粒状影を認め(図3,単純X線写真では認識しづらい),典型的な結節・気管支拡張型の画像所見であった.

MAC抗体検査(感度は不十分だが特異度は高い)は陽性,喀痰検査では検体が得られず,気管支鏡検査を施行した.右上葉からの擦過・洗浄検体で抗酸菌塗抹は陰性であったが,M. aviumのPCR陽性であり,後に培養陽性より診断確定した.小範囲であったため,直ちに治療開始とはせず,進行を見定める目的で定期画像チェックの方針とし,外来経過観察中である.

図1
図2
図3
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文献

  1. Namkoong H, et al:Epidemiology of Pulmonary Nontuberculous Mycobacterial Disease, Japan. Emerg Infect Dis, 22:1116-1117, 2016
  2. 「画像と病理から学ぶ非結核性抗酸菌症」(徳田 均, 他/著), 克誠堂出版, 2016

プロフィール

笠井昭吾(Shogo Kasai)
JCHO東京山手メディカルセンター総合診療科・救急科
徳田 均(Hitoshi Tokuda)
JCHO東京山手メディカルセンター 呼吸器内科
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