画像診断Q&A

レジデントノート 2019年9月号掲載
【解答・解説】咳嗽,労作時呼吸困難を主訴に受診した30歳代男性

Answer

サルコイドーシス

  • A1:両肺野の広範な粒状影と両側肺門,縦隔リンパ節の腫脹を認める.
  • A2:鑑別として,粟粒結核,サルコイドーシス,転移性肺腫瘍などを考える.診断のための検査として,喀痰検査,胸部CTを行い,可能であれば気管支鏡検査を行う.

解説

胸部単純X線写真では,両側びまん性に粒状影を認め,さらに両側肺門部,縦隔のリンパ節腫脹も認められる(図1).これらの所見からは粟粒結核,サルコイドーシス,転移性肺腫瘍などが疑われる.本症例は30歳代の若年者であることから悪性腫瘍の可能性は少ない.東南アジア出身で母国と日本を頻繁に往復していることから,まず結核症,特に粟粒結核を疑い,鑑別としてはサルコイドーシスが問題となる.

粟粒結核の症状は発熱,体重減少,呼吸困難などで,特に発熱は8割以上に認められ,診断の手がかりとなる.菌検査も重要で,複数回の喀痰検査,胃液検査,気管支鏡検査を行うべきである.本症例では,発熱はなく,菌検査(喀痰検査,気管支鏡検査)で抗酸菌が陰性であり,またT-SPOT® TBも陰性であった.粟粒結核のHRCT所見は,肺野のびまん性の微細粒状影であり,その分布は既存構造と一定の関係をもたずランダムであることが特徴である.本症例はびまん性の粒状影であり,一見ランダム分布ともみられるが,粒状影の分布は大部分小葉中心性であること,一部ではあるが気管支血管束に沿うこと,また小葉間隔壁の肥厚もみられることから,病変分布はむしろリンパ路に沿ったものであると読める(図23).これはサルコイドーシスを強く示唆する画像所見である.

サルコイドーシスは,多臓器を侵す肉芽腫性疾患である.現在ではヒトの常在菌であるCutibacterium acnes(Propionibecterium acnes)の活性化と,それに対する宿主のTh1型細胞性免疫の異常応答であると考えられている1,2).肉芽腫形成は全身の臓器に及びうるが,肺,肺門・縦隔リンパ節,眼,心臓などが臨床的に重要である.

画像(HRCT)所見では,肺野において微細粒状・結節影が,肺内リンパ路(気管支血管束や葉間胸膜,臓側胸膜など)に沿って分布する像が特徴的である3).本症例の胸部CT(図23)では,これらの特徴が備わっており,また,ACE 54.4 U/Lと高値を示していた.経気管支肺生検で,乾酪壊死を伴わない類上皮細胞肉芽腫を認め,サルコイドーシスと診断した.心臓や眼には病変を認めなかった.一般に肺野・縦隔リンパ節病変のみの場合は経過観察とするが,本症例の場合は労作時呼吸困難が強く,線維化の進行が疑われることから,プレドニゾロン0.5 mg/kg/日の内服加療とした.

日本の労働力人口減少や東京五輪を控え,今後,海外からの渡航者・移住者の増加が見込まれている.それらの若年者において胸部単純X線写真でこのようなびまん性粒状影を見たら,まず粟粒結核とサルコイドーシスを疑い,鑑別することが重要である.

図1
図2
図3
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文献

  1. 山口哲生:サルコイドーシスの病因・病態・診断・治療に関する疫学的ならびに臨床的研究. 日サ会誌, 29:3-7, 2009
  2. 江石義信:アレルギー性内因性感染症としてのサルコイドーシスの病因論. 呼吸器内科, 24:261-270, 2013
  3. 藤本公則:サルコイドーシスの胸部画像診断. 日サ会誌, 33:31-34, 2013

プロフィール

永井博之(Hiroyuki Nagai)
JCHO東京山手メディカルセンター 呼吸器内科
徳田 均(Hitoshi Tokuda)
JCHO東京山手メディカルセンター 呼吸器内科
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