画像診断Q&A

レジデントノート 2019年10月号掲載
【解答・解説】腹痛と嘔吐で受診した40歳代女性

ある1年目の研修医の診断

胃から小腸にかけて拡張していて,小腸に壁肥厚がみられます.小腸閉塞で間違いないと思います.

Answer

小腸アニサキス症

  • A1:小腸に限局的な壁肥厚がみられ,そこから口側の消化管が連続的に拡張している.腹水も認められる.
  • A2:数日以内の魚介類の生食歴.

解説

アニサキスは,中間宿主であるサバ,サケ,サンマ,イカなどの魚介類に寄生する線虫で,消化管アニサキス症はアニサキスの幼虫が寄生した魚介類を生食することで発症する消化管幼虫移行症である.症状は強い腹痛,嘔吐,腹部膨満などで,Arthus型アレルギー反応が関連していると考えられている.本邦ではこの10年間で発生数が20倍以上と爆発的に増えており,芸能人などが感染したことで,その激烈な症状が広く知られるようになってきている.胃への感染が圧倒的に多いが,食道や小腸,稀だが結腸に感染することもある.

腹痛が強いことから,受診した際には診断のためにCTが撮影される場合が多い.胃アニサキス症が疑われる場合は内視鏡で検出・駆除することが可能であるが,小腸アニサキス症は疑われたとしても内視鏡による虫体の検出が難しく,血液検査の結果を得るにも時間を要するため,診断のキッカケとして画像診断の担う役割は大きい.

小腸アニサキス症のCT所見は,腸管の限局的な全周性粘膜下浮腫による狭窄,それによる口側腸管の拡張,腹水が特徴といわれている(図1).しばしば機械性小腸閉塞との鑑別が難しく,特に腹水が比較的多く認められることから,絞扼性腸閉塞を疑われ手術が行われることもある.バンド(索状物)や内ヘルニアなどによる小腸閉塞に対して,小腸アニサキス症では全周性壁肥厚による狭窄部の長さが数cm以上になることが多い点や,造影CTで漿膜の造影効果が強く認められる点などが鑑別点になりうる(図1図2).正確な診断さえつけば抗ヒスタミン薬などによる保存的治療が可能であり,できれば不要な手術侵襲は回避したい.

地域差もあるが,消化管アニサキス症など寄生虫感染症は忘れたころにやってくる.たとえ海から離れた内陸であっても,昨今の物流事情で日本中どこでも罹患しうる.病歴や画像から本疾患を疑った場合には,特に鮮魚の生食歴の詳細な聴取が診断への鍵となる.

図1
図2
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プロフィール

山内哲司(Satoshi Yamauchi)
奈良県立医科大学 放射線科・総合画像診断センター
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