画像診断Q&A

レジデントノート 2020年2月号掲載
【解答・解説】自転車で転倒後の20歳代男性

ある1年目の研修医の診断

肋骨は折れていないと思います.腹水やfree airもないように見えます.重篤感もないようですし,打撲程度ではないでしょうか.

Answer

外傷性脾損傷

  • A1:脾臓外側,肝下角に高濃度の腹水がみられ,血性腹水と考えられる.骨盤底にも大量の血性腹水あり.
  • A2:出血源を検索するために造影CTを考慮する.

解説

普段,病院で診療していると,対応する患者の半数以上は高齢者であることが普通であろう.「最近の若者は我慢ができない…」などという声が聞かれることもあるが,やはり身体の能力としてみたときに,その変化に耐えうる力があるのはさまざまな予備能の高い若年者であることが多い.本症例は,自転車のハンドルにより鈍的に脾損傷をきたしていたが1人で転倒した恥ずかしさもあったらしく,そのまま帰宅していた症例である.

前頁で提示した単純CT(図1〜3)では,肝表,脾臓周囲,骨盤内という,まず腹水を検索する有名な部位に血性腹水が認められる.血性腹水は通常の腹水と異なり高濃度で映るため,しばしば筋や肝などの実質臓器に近い濃度となり,それらの臓器と一体になったように見えてしまい,見逃されることがある.ウインドウレベル,ウインドウ幅を調整すると見やすくなる場合もあるが,なによりも「ここにはあるかもしれない」という目で読影することが大切である.特に提示した骨盤底の単純CT(図3)は,S状結腸の周囲に通常なら絶対に見える「脂肪濃度(腸間膜の脂肪)」が存在しないことに気がつくだろうか.女性であれば,あたかも子宮かのように見える血性腹水も経験する.重篤感によらず,外傷患者の場合は「血性腹水があるかもしれない」と常に意識すべきである.

なお解説編に使用した画像は,それぞれのレベルの造影CT(図456)である.この画像を見ると腹水の存在は明らかであろう.しかし逆に,造影後の画像のみを見てしまうと,この腹水が「濃度の高い血性腹水である」ということを見逃すこともある.基本中の基本であるが,造影CTを撮影した場合であっても必ず単純CTを確認することを忘れてはいけない.今回の症例でも是非,比較してみてほしい.

今回は,見慣れている読者にとってはとても簡単な症例であったと思う.それならば全く問題ない.しかし慢心してはいけない.本症例は重篤感なく独歩で来院したが,外来超音波検査で腹水が認められ,病歴から外来担当医が血性腹水を疑い造影CTが撮影された.もしも見逃すと致死的になりうる.研修医2年目の読者の方々は,いよいよ初期研修医を卒業する日も近づいてきている頃かと思うが,ぜひ今一度,画像診断の基本部分を確認していただきたいと思い提示した.

図1
図2
図3
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プロフィール

山内哲司(Satoshi Yamauchi)
奈良県立医科大学 放射線科・総合画像診断センター
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