画像診断Q&A

レジデントノート 2020年3月号掲載
【解答・解説】突然の強い腹痛を自覚した80歳代男性

ある1年目の研修医の診断

これは分かりました! 上腸間膜動脈(SMA)の造影効果がなくなっているようなので,SMA閉塞症でしょう.

Answer

急性上腸間膜動脈閉塞症

  • A1:上腸間膜動脈(SMA)が若干高濃度を呈している(図1).
  • A2:SMAの造影効果が起始部から認められない(図2).

解説

上腸間膜動脈(superior mesenteric artery:SMA)閉塞症は,SMA血栓症とSMA塞栓症に大別され(本症例は前者),SMAの急性閉塞と,それに伴った消化管および腸間膜の虚血が主病態である.致死率が高い重篤な急性腹症として知られ,国家試験でも度々取り上げられる.

本疾患の画像診断には造影CTが有用とされ,SMAの造影効果の途絶(図2)や支配領域の腸管の造影不良,腸管壁内ガスや門脈ガスといった異常所見が知られる.これらを確認できれば診断は容易であるが,実はここに至るまでにはいくつか落とし穴がある.基本事項は成書に譲り,今回はその落とし穴を中心に記載する.

まず本疾患は数時間のマネジメントの遅れで致死的となりうるにもかかわらず,超急性期には重篤な急性腹症の大部分で認められる「腹膜刺激徴候」がないケースがあることが知られる.本疾患のはじまりは「動脈血流の阻害」であり,別に炎症が生じているわけではないため,この段階で腹膜に炎症が波及することは通常のケースではない.消化管が虚血・壊死などを起こして,ようやく腹膜への炎症波及がはじまることになるが,このときにはすでに非常に広範囲の小腸が不可逆に壊死しており,救命が困難となる.異常所見である腸管壁内ガス,門脈ガスは通常この段階で生じるため,予後不良のサインと考え,可能ならばその前に診断したい.

また本症例のように,この疾患の患者は腎機能障害をもつ割合が高く,腹部診察所見もあわせて現場で造影剤の投与を躊躇してしまうことで診断が遅れる場合もある.単純CTでもSMAよりもSMV(superior mesenteric vein:上腸間膜静脈)が細く描出される所見(smaller SMV sign)が知られるが,脱水患者にはしばしば認められる所見のため特異度は低い.急性期の血栓が単純CTで高濃度を呈すること(図1)もあるが,これも動脈硬化で石灰化した動脈壁のため評価が難しい場合がしばしばある.可能ならば経腹的超音波検査でSMAの血流を直接観察するのが,最も簡便で侵襲も少ない.

有名かつ重篤な疾患だが,実際にはこのように落とし穴が多いということも知っておいてほしい.特に本症例のような既往歴を有する患者の突然の腹痛を診た場合,この疾患の可能性を考えて迅速に診断できる研修医が1人でも増えることを願う.

図1
図2
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参考文献

  1. 「ここまでわかる急性腹症のCT 第3版」(荒木 力/著), メディカル・サイエンス・インターナショナル, 2018

プロフィール

山内哲司(Satoshi Yamauchi)
奈良県立医科大学 放射線科・総合画像診断センター
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