画像診断Q&A

レジデントノート 2020年6月号掲載
【解答・解説】慢性咳嗽と発熱を主訴に受診した50歳代女性

Answer

慢性好酸球性肺炎(chronic eosinophilic pneumonia:CEP)

  • A1:胸部X線(図1)では,両側上肺野(右は中肺野も)にair bronchogramを伴う浸潤影を認める.上肺野優位の分布から肺結核も鑑別にはなるが,散布影はなく可能性は低い.やや非典型的な陰影分布ではあるが,定型・非定型肺炎も鑑別になる.胸部CT(図2)では,両肺野末梢優位に斑状に分布する浸潤影を認め,非区域性の分布( )を示していることから,非感染性の病態がより考えやすい.末梢血好酸球増加と,他臓器の障害がないことから,慢性好酸球性肺炎を第一に考える.
  • A2:気管支鏡検査を行い,気管支肺胞洗浄液(BALF)中の好酸球分画を確認する.

解説

好酸球性肺疾患とは,肺組織に多量の好酸球浸潤を認める疾患の総称である.寄生虫,薬剤,真菌などが原因となる場合があるが,それ以外の特発性のものは① 単純性肺好酸球増多症(Löffler症候群),② 急性好酸球性肺炎(acute eosinophilic pneumonia:AEP),③ 慢性好酸球性肺炎(CEP),④ 好酸球増多症候群(hypereosinophilic syndrome:HES),⑤ 好酸球性多発血管炎性肉芽腫症(eosinophilic granulomatosis with polyangiitis:EGPA)に分類される.本症例は,気管支鏡検査でBALFの細胞数230×104個/mL,細胞分画で好酸球95.5%と上昇を認め,好酸球性肺疾患として合致する結果であった.症状出現から6カ月と慢性経過であり,寄生虫,薬剤,真菌など特定の原因を認めないことと,HESやEGPAに分類されるような他臓器の病変がないことから,CEPと考えられた.

CEPは特発性好酸球性肺疾患のなかでは最も頻度が高い.主な症状は乾性咳嗽や息切れで,発熱や体重減少を伴うこともあるが,重症の呼吸不全を呈することは稀である1)約50%の症例で喘息の既往があるとされるが,本症例では認められていない2).CEPの画像所見は,典型的には両側または片側性に上肺野の末梢優位な陰影分布を示すことが特徴である.胸部X線では“photographic negative of pulmonary edema pattern(逆肺水腫の像)”と呼ばれる末梢優位の非区域性浸潤影が特徴的とされ,本症例の左肺の所見(図1 )はそれに合致するが,これはCEPで必ず認める所見ではなく約40%でしか認めないとの報告もある.胸部CTでは,末梢肺野優位に斑状に分布する浸潤影・スリガラス影が特徴的で,両側性にみられることが多く,時にcrazy-paving appearanceやreversed halo signを認める場合もある.また陰影の経過が長い場合は,吸収過程を反映して胸膜に平行な線状影,板状影を認める場合もある.これら画像所見は器質化肺炎(OP)と類似しており,喘息の既往や末梢血好酸球数,BALFの好酸球分画などの臨床情報により鑑別をする必要がある.また肺炎球菌やレジオネラなどの重症肺炎との鑑別も問題となるが,CEPの方がより非区域性の分布が強いことを手掛かりに鑑別する2,3)

無治療で軽快するCEPは10%未満と稀であり,基本的には全身性ステロイドによる治療を行う.プレドニゾロン(PSL)0.5 mg/kgまたは30 mg前後で開始し,多くの場合は2週間以内に画像と症状の著明な改善を認める.ステロイド治療の効果が乏しい場合は,診断が異なる可能性を考慮する.またステロイドは長期投与が必要であり,減量中に約半数の症例で再発する点には注意すべきである.本症例では,PSL 0.5 mg/kgで治療開始し,約2週後の胸部X線で陰影はほぼ消退した.約4カ月でPSL 5 mgまで減量したが,再燃なく経過している.

本症例は,CEPとして比較的典型的な一例である.上肺野優位の浸潤影・スリガラス影をみた場合は,CEPの可能性も念頭において鑑別を進めていくとよい.

図1
図2
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文献

  1. Suzuki Y & Suda T:Eosinophilic pneumonia: A review of the previous literature, causes, diagnosis, and management. Allergol Int, 68:413-419, 2019(PMID:31253537)
  2. 「肺HRCT 原書4版」(Webb WR,他/著,蝶名林直彦/監修, 西村直樹,松迫正樹/監訳),p386-395,丸善出版,2010
  3. 「胸部のCT 第3版」(村田喜代史,他/編),pp486-492,メディカル・サイエンス・インターナショナル,2011

プロフィール

川述剛士(Takeshi Kawanobe)
JR東京総合病院 呼吸器内科
山口哲生(Tetsuo Yamaguchi)
新宿つるかめクリニック
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