画像診断Q&A

レジデントノート 2020年7月号掲載
【解答・解説】発熱,咽頭痛,咳嗽,その後の呼吸困難にて受診した70歳代女性

ある1年目の研修医の診断

両肺胸膜側にすりガラス陰影を認めます.酸素化障害も高度なため入院の手配をしつつ,胸部CTを施行します.

Answer

COVID-19肺炎の1例

  • A1:両側中下肺野・胸膜側優位に広範なすりガラス陰影を認め,左下肺野では一部浸潤影を認める.
  • A2:COVID-19肺炎を考え,接触・飛沫感染予防策を十分にとりつつ,胸部CT検査を行う.あわせて感染対策委員などに報告,保健所と連携して上気道のウイルスPCR検査を行う.

解説

COVID-19肺炎の症例である.2020年4月時点で,本邦はこの感染症のパンデミック期にあり,上気道炎症状にて発症し,急激に酸素化障害が出現していること,胸部単純X線写真で両側性のすりガラス陰影を認めることから,COVID-19肺炎を第一に疑う.

WHOは現在世界を席巻しているコロナウイルス感染症の呼称を「COVID-19」と定めた.COVID-19の「CO」は「corona」,「VI」は「virus」,「D」は「disease」,「19」は「2019年」を意味する.COVID-19の初期症状は,鼻汁や喉の痛み,咳嗽,発熱などであり,感冒と異なるところはない.特に,37.5℃程度の発熱と強い倦怠感を訴える人が多いという特徴がある.また嗅覚・味覚障害も特徴の1つである.およそ5~7日間程度症状が続き,多くはしだいに改善するが,20%以下の頻度で肺炎を発症し重症化する.特に高齢者や基礎疾患〔高血圧,心血管疾患,糖尿病,悪性腫瘍,COPD(chronic obstructive pulmonary disease:慢性閉塞性肺疾患)など〕を有する人で重症化のリスクが高いと考えられている.診断は,主に上気道由来検体(鼻咽頭拭い液)のPCR法で行われているが,そのほかにも迅速検査システムの開発が進んでいる.

画像所見は,早期であれば斑状のすりガラス陰影が両側肺野・胸膜側優位に散在し,進行するとすりガラス陰影が多葉性に拡がり,一部に浸潤影の混在がみられるようになる.治療は,抗ウイルス治療,抗炎症治療,そして呼吸補助の3本の柱からなる.抗ウイルス薬としては,抗HIV治療薬の一種であるロピナビル・リトナビルや新型インフルエンザ用治療薬であるファビピラビルなどが臨床試験の段階にある.急性膵炎の治療薬ナファモスタットも最近注目されている.また気管支喘息治療薬である吸入ステロイドのシクレソニドも新型コロナウイルスの活性を失わせることが確認され,国内で臨床試験が進められているが,2020年5月1日現在いずれも保険適用ではない.抗炎症治療としては,ステロイド,抗IL-6抗体トシリズマブなどが試みられている.呼吸補助としては,酸素投与,人工呼吸などで対処しており,さらに重篤化した場合,体外式膜式人工肺(ECMO:人工肺とポンプで肺の代替を行う装置)も使用されるが,この治療に習熟した専門病院で行われる.

本症例の胸部画像(図12)では,両側肺野・胸膜側優位に広範なすりガラス影を認める.海外渡航歴や明らかなsick contactはなく,嗅覚・味覚障害もないが,外出の多い生活歴,画像所見からCOVID-19肺炎を疑った.初療時より十分な感染対策をとりながら検査を進め,保健所に相談のうえ,喀痰のPCR法検査を提出したところ,陽性が確認された.初診時は,酸素投与6 LマスクでSpO2 90%程度であったが,数時間後には酸素需要が15 Lマスクとなり急速な呼吸状態の悪化がみられた.全身管理下に種々の薬物治療を行っている.

※本症例は患者が特定されないよう,一部の情報を改変している.

図1
図2
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プロフィール

笠井昭吾(Shogo Kasai)
東京山手メディカルセンター 総合診療科・救急科
徳田 均(Hitoshi Tokuda)
東京山手メディカルセンター 呼吸器内科
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