画像診断Q&A

レジデントノート 2020年8月号掲載
【解答・解説】慢性的な右側腹部痛で来院した70歳代女性

ある1年目の研修医の診断

上行結腸の周りに白い糸みたいなものがありますね.動脈硬化? 腸管虚血とかでしょうか.

Answer

特発性腸間膜静脈硬化症
(idiopathic mesenteric phlebosclerosis)

  • A1:結腸周囲に線状の石灰化が認められ(図AB▶︎),上行結腸壁は全体に肥厚している(図AB▶︎).
  • A2:特発性腸間膜静脈硬化症

解説

本疾患はあまり耳にしたことのない病名かもしれないが,以前は腸間膜静脈硬化症,静脈硬化性大腸炎などと呼ばれることが多かった,比較的稀な疾患である.

さまざまな原因で静脈に硬化性変化が生じ,慢性的な消化管壁の還流障害が主たる病態である.静脈性の虚血であり,血便の原因として高頻度にみられる虚血性腸炎とは異なる病態と考えられている.中高年の女性に好発,慢性的にくり返す腹痛や便通異常,腹部膨満などと特異度の低い症状が多く,無症状のままCTなどで偶発発見される例もあることから,診断にいたっていないケースもあるものと思われる.原因として一部の漢方薬の内服歴があげられているが,はっきりしないことも多い.明確な治療法も確立されておらず,原因薬剤の内服があるならば中止を考慮される程度である.腸閉塞をくり返すような場合には結腸切除も考慮される.

このように「パッとしない」臨床像の本疾患だが,本症例で提示した通り,CT像はなかなか派手で,見逃すことはないだろうし,知らないと現場で焦るかと思うので今回とりあげた.くり返しになるが,提示したCTは「単純CT」である.単純CTで右側結腸壁内やその領域に多数の線状高濃度(石灰化)が確認でき,とても特徴的である.この所見をみた場合に鑑別疾患はほぼないと言ってよい.

ただし注意しておきたいのが,先述の通り,この疾患は無症状である可能性も十分にある.そのため仮に右下腹部痛を主訴に来院した患者のCTでこの所見が確認されたとき,例えば症状の原因となっている疾患は実は尿管結石症で,この疾患は症状とは無関係という可能性もある.特に例えば「悶えるほどの痛みで救急搬送」などの場合に,重篤な疾患が別に隠れている可能性は結構高い.画像所見が派手なだけに,この点が本疾患のpitfallとなりうるため,十分に注意してほしい.

図1
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プロフィール

山内哲司(Satoshi Yamauchi)
奈良県立医科大学 放射線科・総合画像診断センター
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