膀胱のなかに空気があるように見えます.壁も分厚くて,もしかしたらこれは膀胱じゃなくて膿瘍でしょうか.
「気腫性●●●」という疾患はさまざまあるが,そのなかでは比較的マイナーと思われる気腫性膀胱炎を今回はとりあげた.気腫性膀胱炎は膀胱壁に対する細菌感染によって生じる重症感染症である.通常の膀胱炎と同様に女性に多く,糖尿病や排尿障害などの背景を有する場合が多い.起炎菌はEscherichia coliが多く,通常の尿路感染症に準じた抗菌薬治療でもいいが,全身状態が不良の場合,集学的治療が必要となることがある.
CT画像では,膀胱内や膀胱壁内にガスを指摘することが大切である.ただ膀胱カテーテル留置後や,一時的な導尿後には膀胱内にガスが認められるため,かならず確認しておく必要がある.膀胱壁内のガス(図1,2▶︎)は特異度が高いため,有用である.また,膀胱周囲に脂肪織濃度上昇が見られる(図1→,図3■)ことも気腫性膀胱炎を示唆する所見となる.場合によっては腹腔内外に遊離ガスが出現することもある.
ここで膀胱壁「内」のガスをどのように見つけるか,簡単に触れておく.なによりも内腔の尿をぐるりと囲むような薄いガス(図2▶︎)を同定することが大切である.膀胱は骨盤部の臓器であり周囲には小腸や結腸など消化管が存在するため,見分けることが必要ではあるが,やや乱暴な言い方をすると,消化管などの腔内では重力の存在によりその腔の上方(通常は仰臥位で撮影するため腹側)にガスが分布する.腔や臓器の周囲をぐるりと囲むような分布のガスは,消化管(良性腸管気腫症:2019年6月号)であれ,胆嚢(気腫性胆嚢炎:2019年9月号)であれ,膀胱であれ,壁内に分布するガスである可能性を考慮する必要がある.