画像診断Q&A

レジデントノート 2020年12月号掲載
【解答・解説】発熱と全身倦怠感で来院した80歳代女性

ある1年目の研修医の診断

腹壁瘢痕ヘルニアがありそうですね.周りの脂肪織濃度も上昇しているようですが.

Answer

腹壁瘢痕ヘルニアに伴った横行結腸穿孔

  • A1:腹部正中に腹壁瘢痕ヘルニアがみられ,横行結腸が脱出している(図BC).その背側には糞便の脱出がみられ(図B▶︎),脂肪織混濁も高度に認められる.
  • A2:腹壁瘢痕ヘルニア,横行結腸穿孔

解説

腹壁瘢痕ヘルニアは日常よく遭遇する疾患で,手術などにより腹壁の筋が断裂し,その部分を介して消化管などの腹腔内臓器や腹腔内脂肪が皮下に脱出する状態をさす.ヘルニアが認められていても,消化管の通過障害や腹痛や嘔吐といった症状がない場合もよくある.帝王切開も含めた術後性変化が原因であることが多い.消化管が欠損部にはまり込み,強い通過障害をきたしたり,ヘルニア門が小さくclosed loopを形成した場合には絞扼の恐れもあるため手術が推奨される.特にヘルニア内の腸間膜浮腫,腹水がある場合は注意が必要である.また本症例のように血流障害は強くなくても内圧が上昇することで消化管穿孔につながる場合もある.

本症例は,画像診断としては腹壁瘢痕ヘルニアがあること,消化管管腔外に糞便と考えられる構造とその周囲の脂肪織混濁が確認されることから,それほど難しいものではないだろう.なお,free airははっきりしなかった.

本症例は,腹痛症状に乏しく発熱を主訴として来院されたため,(地域の流行の程度にもよるが)今後COVID-19の可能性も考慮しての診療となり丁寧な身体診察が行えない状況が想定されること,患者の肥満が強いため腹壁の皮下脂肪がとても分厚く簡易的な視触診で腹部の膨隆に気づくことが難しかったことから提示させていただいた.前号(2020年11月号)にも記述したが,COVID-19の流行により従来行われてきた診療のプロセスが少し変化し,検査前に安全に十分な身体診察を行えず,鑑別を絞りきれない状態で血液検査やCTが行われるケースが出てきている.いま発熱患者を診る場合,PCRや抗原検査も大切ではあるが,「それらが陰性のときにどうするか」を常に頭に入れながらの診療が求められる.

図
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プロフィール

山内哲司(Satoshi Yamauchi)
奈良県立医科大学 放射線科・総合画像診断センター
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