画像診断Q&A

レジデントノート 2021年1月号掲載
【解答・解説】発熱と腹痛で来院した70歳代女性

ある1年目の研修医の診断

左側小腸あたりに脂肪織濃度上昇がありますね.穿孔でしょうか.Free airは…見つけられません.

Answer

小腸憩室炎

  • A1:腹部正中やや左側の小腸(おそらく空腸)に大きな憩室が認められ(図1▶︎),その周囲に脂肪織の混濁が目立つ(図1▶︎).
  • A2:小腸憩室炎.

解説

憩室炎は非常にcommonな疾患で,「経験したことがない」という読者はほとんどいないだろう.ただ憩室と聞くと「大腸憩室」をイメージする人がほとんどと思われるが,食道,胃,十二指腸,虫垂…そして今回取り上げた小腸にも憩室は発生する.ちなみに気管にも憩室が生じることがあるため覚えておきたい.

Meckel憩室を除く小腸憩室の頻度は稀であり,そのなかでは近位空腸と遠位回腸に生じることが多いとされているため,今回のような症状をきたすことは珍しい.ただ小腸であっても憩室炎の基本的な発症機序はかわらず,憩室の入り口部が糞便や残渣,炎症などにより閉塞し,憩室内圧が上昇することにより発症すると考えられている.治療法は絶食と抗菌薬などによる保存的治療が推奨されるが,周囲に膿瘍を形成したり,穿孔が疑われたりする場合には手術も検討される.

画像診断ではやはりCTが多く用いられ,憩室周囲の腸間膜 脂肪や腹腔内脂肪に限局的な濃度上昇がみられるほか,近接する腹膜に肥厚が認められることもある.本症例では近位空腸から突 出するようなガスを含む構造(図1▶︎)や,小腸から突出する憩室(図2▶︎)が認められた.読影の際は穿孔を伴う可能性も考え,free airを慎重に検索することが重要である.また近傍にある組織と穿通する(内部の構造が直接つながる)こともあり,この際にはfree airが認められない場合もあるため注意が必要である.さらに魚骨などによる穿孔が背景にあり,小腸近傍に小さな膿瘍を形成した場合,あたかも憩室かのように見えることもある.小腸憩室炎は決して頻度の高い疾患ではないため,魚骨やPTP(press through pack)など穿孔に関与しやすい異物を疑う構造が周囲にないかも十分に確認する必要がある.

なお本症例は発熱症状が認められ,腹痛,圧痛もあったが,いわゆる腹膜刺激兆候はなかった.これは,前方の腹壁直下の腹膜には炎症が波及しておらず,背側の腹膜に肥厚が認められた (図1▶︎)ことから,背部からの叩打痛が影響していたと思われる.多くの場合,このように画像所見と臨床所見は密接にリンクするものである.感染対策に気を配りつつの診療が求められているが,ぜひこのような関係を味わいながら,画像診断を楽しんでいただきたい.

図1
図2
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プロフィール

山内哲司(Satoshi Yamauchi)
奈良県立医科大学 放射線科・総合画像診断センター

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