画像診断Q&A

レジデントノート 2021年1月号掲載
【解答・解説】体重減少,胸部異常陰影にて紹介受診した50歳代男性

ある1年目の研修医の診断

大動脈弓の高さの右縦隔に,腫瘤を認めます.縦隔腫瘍,リンパ腫,縦隔リンパ節転移,サルコイドーシスなどを考え,腫瘍マーカーなどの血液検査を追加,胸部CT検査を施行します.

Answer

肺腺がん,縦隔リンパ節転移

  • A1:気管下部右側に本来確認できるはずの傍気管線(図2B▶︎)が見えず,気管下部右側の縦隔に腫瘤性病変の存在が疑われる(図1図2A).
  • A2:縦隔腫瘍の鑑別として,リンパ腫やサルコイドーシス,がんのリンパ節転移などを考え,腫瘍マーカーなどの血液検査,胸部CT検査を行う.

解説

本症例は縦隔リンパ節転移を主徴とした肺腺がんの症例である.気管下部右側に本来確認できるはずの傍気管線が見えず,気管右壁に接する腫瘤性病変の存在が疑われる.

傍気管線の確認は,胸部単純X線写真読影の基本の1つである.傍気管線は,気管下部右側の壁が線として投射されることで成立する陰影で,1~2 mmの太さの線として認識される.傍気管線の消失は,気管の右側の壁に接する位置に何らかの病変があることを意味する.ただし正常でもはっきり認識できないことがあるので,確認できないからといって直ちに異常とは言い切れない.

本症例の胸部単純X線写真では,傍気管線は消失し,気管下部右側に腫瘤影を認める(図1図2A).参考として健常者の画像を呈示するが,傍気管線がはっきりと認識できる(図2B▶︎).胸部造影CTでは,気管前~傍気管リンパ節領域,すなわち中縦隔に腫瘍を認めた(図3).

縦隔腫瘍は発生する部位によって特徴があるため,上縦隔,前縦隔,中縦隔,後縦隔に分けて扱われる.上縦隔では甲状腺腫瘍,前縦隔では胸腺腫瘍,中縦隔では気管支嚢胞や心膜嚢胞,リンパ節腫大(サルコイドーシスやリンパ節転移),後縦隔では神経原性腫瘍が多い.なお悪性リンパ腫は部位に関係なく発生する.

本症例の腫瘍はCT画像から嚢胞性ではなく充実性であるため,悪性腫瘍の可能性を考えた.血液検査では,可溶性IL-2R 1,470 U/mL(正常145〜519)と上昇,肺がん関連の腫瘍マーカー(CEA,SCC,シフラ,NSE,proGRP)は正常範囲内であった.診断確定のため気管支鏡検査,超音波ガイド下経気管支針生検(endobronchial ultrasound-guided transbronchial needle aspiration:EBUS-TBNA)を施行したところ,大小不同な不整形に腫大した核をもつ異型細胞の集塊があった.免疫組織化学的検討にて悪性リンパ腫は否定的で,低分化型の非小細胞肺がんと診断した.肺野に明らかな原発巣らしき病変がないため,肺以外の臓器からの縦隔リンパ節転移の可能性も考え,消化管を含めた全身精査を行ったが,他臓器の原発巣は認めず,遠隔転移も認めなかった.1つの可能性として,縦隔胸膜に接して発生した小さい原発巣が転移と一体化したことも考えられた.非小細胞肺がんに対する放射線化学療法を施行し,完全緩解を得た.

図1
図2
図2
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プロフィール

笠井昭吾(Shogo Kasai)
JCHO東京山手メディカルセンター 総合診療科・呼吸器内科
徳田 均(Hitoshi Tokuda)
JCHO東京山手メディカルセンター 呼吸器内科
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