画像診断Q&A

レジデントノート 2021年2月号掲載
【解答・解説】発熱をくり返す20歳代女性

ある1年目の研修医の診断

右腎に造影の鈍い部分が認められます.腎盂腎炎でしょうか…? でも僕の知っている腎盂腎炎とはイメージが少し違います.

Answer

急性巣状細菌性腎炎(AFBN)

  • A1:右腎の一部に造影効果が淡い部分が認められる(図1A図2▶︎).また右上部尿管は対側に比して少し拡張し尿管壁の造影効果もやや目立つ(図1B▶︎).
  • A2:急性巣状細菌性腎炎.

解説

急性巣状細菌性腎炎は尿路・腎感染症の1つで,腎実質の腫瘤様構造の形成を特徴とした細菌性感染である.名称が長いため,英語名acute focal bacterial nephritisの頭文字からAFBNと呼ばれることが多いかと思う.commonな疾患である腎盂腎炎から感染が遷延するとAFBN,さらに病態が進み膿瘍を形成すると腎膿瘍と呼ばれる病態になると考えられており,同側の腎内に複数の病態が混在していることもしばしばある.明らかな腎膿瘍になると経皮的ドレナージ術などを考慮する必要があるが,腎盂腎炎とAFBNは基本的に抗菌薬などで保存的に治療されることが多いため,臨床現場では両者を明確には区別せず一連の疾患として扱っていることもある.

画像診断は超音波やCTが用いられる〔超音波についてはレジデントノート増刊「できる! 使いたくなる! 腹部エコー」(Vol.22 No.14)も参考にしていただきたい〕.単純CTでは異常を指摘することが難しく,造影CTで造影良好な腎実質のなかに,造影効果が低下している腫瘤状の部分が認められる.少し時間の経過した後に撮影する排泄相においても造影効果が低下していることが一般的である.これらが画像的特徴になるのだが,これだけでは腫瘍性病変との鑑別が問題となる.

腎盂腎炎をはじめ,多くの「感染・炎症」では脂肪織混濁,脂肪織濃度上昇が特徴となり,本コーナーでも何度も解説してきた.本症例も間違いなく,感染・炎症性の病態であるため,通常であれば認められるはずである.しかし今回紹介した本症例では,辺縁部にわずかにみられる程度で,ほとんど認められない.これには病歴も影響している.AFBNは腎盂腎炎から移行する病態と考えられているが,腎盂腎炎は発熱することが一般的であり,疑われた場合にはまず,本症例のように抗菌薬などが投与されていることが多い.これで「治癒しきらなかった部分」が本疾患に移行しうるため,その周囲の脂肪への炎症細胞浸潤や血管怒張などを見ているものと考えられる脂肪織濃度上昇という感染・炎症性疾患を疑うための有力な所見は乏しいことがある.ここがピットフォールとなり,診断を誤る可能性があるのだ.抗菌薬だけではなく,一緒に内服していることも多いNSAIDsなどで発熱がほぼ認められないという状況も想定される.

本コーナーでは過去に何度も,身体所見や病態と画像所見との関係を示してきた.それらを通じて,画像診断を単なる絵合わせではなく,病態解釈のための大切な手段であると捉え,その技術や学問の奥深さを1人でも多くの読者に知ってもらいたいと願っている.オンライン診療の普及の必要性が叫ばれている昨今,これからは画像からも今までより多くの臨床情報を得る必要性が出てくる可能性もあるため,このような視点から今一度,目の前の画像に向かい合ってほしい.

図1
図2
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プロフィール

山内哲司(Satoshi Yamauchi)
奈良県立医科大学 放射線科・総合画像診断センター

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