画像診断Q&A

レジデントノート 2021年2月号掲載
【解答・解説】発熱を主訴に受診した50歳代男性

Answer

結核性胸膜炎

  • A1:右片側性胸水貯留を認めている(図1).鑑別疾患は,悪性(癌性胸膜炎悪性胸膜中皮腫),感染症(肺炎随伴性胸水/膿胸結核性胸膜炎),自己免疫性疾患(リウマチ性胸膜炎)などをまずは考える.肺炎随伴性胸水や膿瘍としては明らかな肺炎像がない点,肺癌による癌性胸膜炎としては腫瘤影や縦隔リンパ節腫大を認めない点が合わない.胸水で圧排され含気がなくなった肺野に肺炎や腫瘤が隠れている場合もあるため,これらの疾患を完全に否定はできないが可能性は低い.また関節リウマチを示唆する関節症状や自己抗体上昇もなく,リウマチ性胸膜炎も考えにくい.以上より,結核性胸膜炎や悪性胸膜中皮腫などを疑う.
  • A2:胸水穿刺を行い,胸水検査で診断を進めていく.後述するように,胸水検査の結果から結核性胸膜炎と臨床診断した.

解説

胸部CT写真では胸水貯留と胸膜肥厚(図2)を認めるが,肺野病変はなく肺炎随伴性胸水や膿胸,癌性胸膜炎は考えにくい.悪性胸膜中皮腫は,胸膜の腫瘤性病変はないものの病初期に胸水のみしかみられない症例もあるため否定はできない.これ以上の鑑別は画像のみでは難しいため,次に胸水検査を行う.胸水中の結核菌の塗沫・培養検査,PCR検査は陰性であったが,リンパ球優位(87.4%)かつADA高値(110.6 U/L)であった.血液検査でインターフェロンγ遊離試験(IGRA)陽性も踏まえて,結核性胸膜炎と臨床診断した.診断的治療としてHREZ(イソニアジド,リファンピシン,エタンブトール,ピラジナミド)による4剤治療を2カ月行った後にHR(イソニアジド,リファンピシン)の2剤治療を4カ月計6カ月の標準治療で胸水は消失し治癒した.

結核性胸膜炎の病態は,「① 特発性胸膜炎(1次結核としての初期変化群の病巣から,結核菌または炎症が胸膜に波及して起こる),② 続発性胸膜炎(二次結核に随伴して起こる),③ 結核菌の血行散布による胸膜炎」の3つに分けられるが,本症例は右胸水以外の病変は認めず,① 特発性胸膜炎にあてはまる.この場合は無治療では65%に 肺結核を発症するともいわれるため抗結核薬による治療は必須であ り1,2),肺結核と同様の標準治療が行われる.また胸水はフィブリン成分が多く固化癒着し拘束性障害を残す場合があるため,初期に胸水の穿刺排液を検討することも多い.診断は結核菌の証明がゴールドスタンダードであるが,菌の証明が難しい場合が少なくない.胸水の抗酸菌塗沫検査は通常陰性であり,培養や結核菌PCRも陽性の割合が低く確定診断ができない場合がある.そのため本例のように,胸水中のリンパ球数やADA,IGRAや抗結核薬の効果などを踏まえた総合的な判断が求められ,診断に迷う症例では胸膜生検を検討する場合もある.結核性胸膜炎は,多くの症例が片側性で両側性は5〜10%程度しかないとの報告3)もあり,片側性胸水貯留の鑑別診断として重要な疾患の1つである.

図1
図2
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参考文献

  1. 「胸膜疾患のすべて 改訂第2版」(Light RW/著,家城隆次,他/監訳),pp262-280,診断と治療社,2010
  2. 三木 誠:結核性胸膜炎と結核性膿胸.日本胸部臨床,74:S208-214,2015
  3. Valdés L, et al:Tuberculous pleurisy:a study of 254 patients. Arch Intern Med, 158:2017-2021, 1998 (PMID:9778201)

プロフィール

川述剛士(Takeshi Kawanobe)
JR東京総合病院 呼吸器内科
山口哲生(Tetsuo Yamaguchi)
新宿つるかめクリニック

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