画像診断Q&A

レジデントノート 2021年3月号掲載
【解答・解説】腹部膨満と腹痛を訴える50歳代女性

ある1年目の研修医の診断

腸管が著しく拡張しているようです.腸閉塞なんだと思いますが,ここまで拡張していると破裂していないか心配になりますね.

Answer

S状結腸軸捻転症

  • A1:骨盤内でS状結腸が間膜ごと捻転し,上腹部にかけて著明に拡張している(図1B).
  • A2:S状結腸軸捻転症.

解説

S状結腸軸捻転症は,国家試験でも頻出する有名な疾患で,その名の通り,S状結腸が間膜ごと捻転し狭窄を伴った機械的腸閉塞症である.高齢男性に多く,特にS状結腸が通常よりも長い人に好発するといわれる(といっても,筆者も自分が長いかどうか知らないが).その他,長期臥床や精神疾患,神経筋疾患を伴う場合に生じやすいとされ,反復する患者も多い.

本疾患の画像所見として“coffee bean sign”は学生もほぼ答えられるような,有名な所見であるが,これは腹部単純X線写真で認められるものである.ただ昨今は単純X線写真を省略する場面も多い.被曝を考慮して省略することも一概に悪くはないのだが,その場合にはCTで必ず撮影されるスカウト像の読影を忘れないでほしい(図2).有名なcoffee bean sign が確認できることが多く,この時点でS状結腸軸捻転症の診断は可能である.逆にCT(断層画像)では意外と診断が難しい場合があるので注意が必要だ.骨盤内にS状結腸の強く引き伸ばされるような狭窄起点が確認され,その口側のS状結腸の著明な拡張が認められる (図1B).冠状断像(図3)で捉えやすいことが多いが,S状結腸間膜の渦を巻くような捻転像が確認されることも多い(whirl signと呼ばれる,図1B図3▶︎).小腸閉塞では液体性の内容物が内腔に貯留していることが多いが,本疾患では拡張したS状結腸の内腔はガスが主体であることも知っておく必要がある.CTを撮影する大きな目的は消化管穿孔を示唆するfree airの検出である.造影効果の有無を確認するために造影CTが撮影されることもあるが,拡張したS状結腸の壁は強く菲薄化していることが多く,壁の造影効果が正確に評価できることはほとんどない.CTで穿孔が否定的であれば内視鏡的に整復され,もし穿孔や壊死が疑われる場合には外科的治療が選択される.

今この原稿を書いているのは2020年11月末,ちょうどCOVID-19の第3波が騒がれ,連日報道されている頃である.初期研修医2年目の読者にとっては,COVID-19に翻弄された研修生活を終え,それぞれが選んだ次のステップへ進むことになると思うが,この2年間の経験を貴重なプラスに変えて,さらに飛躍していってほしい.これまで紹介した症例が,それぞれの道を前進する際に,少しでも役立つことを願う.

図1
図2
図2
  • 画像はクリック/タップで拡大します

プロフィール

山内哲司(Satoshi Yamauchi)
奈良県立医科大学 放射線科・総合画像診断センター

TOP