画像診断Q&A

レジデントノート 2021年6月号掲載
【解答・解説】乾性咳嗽を主訴に受診した60歳代男性

Answer

皮膚筋炎関連間質性肺炎(抗ARS抗体症候群)

  • A1:両側下肺野に横隔膜に平行な複数の索状影が認められ(図1),下肺野はやや収縮している.間質性肺炎を疑う像であるが,蜂巣肺を示唆するような輪状影は認められず,気管支血管束に沿った陰影の分布が想定され,特発性肺線維症(idiopathic pulmonary fibrosis:IPF)は考えにくい.多発性筋炎/皮膚筋炎(polymyositis:PM/dermatomyositis:DM)に関連した間質性肺炎を疑う画像である.
  • A2:皮膚筋炎でみられる皮膚所見を確認する.本症例は,mechanic’s hand(機械工の手,図2)を認めており,抗ARS抗体陽性の間質性肺炎が疑われる.

解説

急性経過で発症した両側下肺野優位の間質性肺炎で,胸部X線写真からは気管支血管束に沿った陰影分布が想定される.本症例の胸部CT写真では非特異性間質性肺炎(nonspecific interstitial pneumonia:NSIP)パターンを示唆する気管支血管束に沿った浸潤影・すりガラス陰影(図3)を認め,外科的肺生検でcellular NSIPの病理診断が得られた.このような所見は筋炎関連間質性肺炎でよくみられる所見であり,皮膚所見と筋症状がないかを確認する.多発性筋炎/皮膚筋炎(PM/DM)ではヘリオトロープ疹やゴットロン徴候がよく知られているが,本症例ではそれらは認められず,mechanic’s hand(機械工の手,図2)と呼ばれる手指側面の角化紅斑が認められた1).また筋症状やCK上昇は認めておらず,血清の抗アミノアシルtRNA合成酵素(ARS)抗体が陽性であることから,無筋症性皮膚筋炎(clinically amyopathic dermatomyositis:CADM)で抗ARS抗体陽性間質性肺炎(ARS-IP)と診断した.

ARS-IPは,ステロイド単剤では高頻度に再燃するため,初期から免疫抑制薬を併用して治療する.急性から亜急性発症のARS-IPは抗炎症薬による治療初期反応は良好であることが多いが,経過中に再燃することが少なくないことと,慢性経過で線維化が進行する例もあるため長期的なフォローアップが必要な疾患である2)

CADMに合併した間質性肺炎では,ARS-IPではなく抗MDA-5抗体陽性間質性肺炎の場合もあり注意が必要である.急性から亜急性の経過で発症した抗MDA-5陽性間質性肺炎は死亡率が高く,ステロイドと免疫抑制薬2剤の計3剤治療を早期から行う必要がある予後不良の一群である.逆ゴットロン徴候1)と呼ばれる手指関節屈側の血豆様皮疹が特徴的であるが,まれに本症例でもみられたmechanic’s handを呈する症例もある3)ため注意が必要である.本症例では外科的肺生検まで行っているがARS-IPでは必ずしも必要な検査ではなく,抗MDA-5抗体陽性例へ施行すると急性の悪化を招くことがあるなど非常に危険であることは覚えておいてほしい.

図1
図2
図3
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文献

  1. 「あたらしい皮膚科学 第2版」(清水 宏/著),中山書店,pp192-195,2011
  2. 「膠原病に伴う間質性肺疾患 診断・治療指針 2020」(日本呼吸器学会,日本リウマチ学会/編),メディカルレビュー社,pp66-89,2020
  3. Muro Y, et al:Cutaneous Manifestations in Dermatomyositis:Key Clinical and Serological Features-a Comprehensive Review. Clin Rev Allergy Immunol, 51:293-302, 2016 (PMID:26100618)

プロフィール

川述剛士(Takeshi Kawanobe)
JR 東京総合病院 呼吸器内科
山口哲生(Tetsuo Yamaguchi)
新宿つるかめクリニック
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