画像診断Q&A

レジデントノート 2021年8月号掲載
【解答・解説】軽い右側腹部痛を訴える40歳代女性

ある1年目の研修医の診断

上行結腸の壁肥厚があります.症状も強くないようですし,大腸がんでいいんじゃないでしょうか.

Answer

腸結核

  • A1:回盲部から上行結腸にかけて全周性壁肥厚と周囲脂肪織混濁(図1▶︎)が認められる.上行結腸は全体に短縮が疑われ(図2▶︎),病変は比較的長い距離に認められる.

解説

今回は稀ではあるが腸結核を取り上げた.本邦の結核感染症(ほとんどは肺結核)は,欧米先進国と比較すると高水準ではあるものの, 数十年に渡って減少傾向である.肺以外の病変が認められるものは肺外結核と呼ばれ,今回扱った腸結核の発生はわが国では年間300例前後で推移している.症状は非特異的な腹痛が約半数で認められるとされるが,無症状であることも多い.結核発症のリスクとされる抗TNF-α抗体製剤が,関節リウマチなどに対して広く使用されるようになって久しいことも注目すべきで,既往歴も気にかける必要がある.実際,本症でも内服歴が確認された.

画像診断として以前より注腸造影検査が有用とされ,教科書や国家試験の過去問などで注腸造影検査の画像を見かけたことのある読者もいるだろう.近年では内視鏡による診断も広く行われている.しかし今日の診療で腹部に対する画像診断は,本症例のようにCTが入り口となるケースが大半ではないかと思う.造影CTで,大腸がんは限局的に粘膜面が肥厚し,進行すると壁の全層が濃染することが一般的であるのに対し,腸結核では粘膜面の濃染が長軸方向に広がるものの肥厚はそれほど強くなく,また粘膜下層以深にはそれほど造影効果が強くないことが多い.さらに消化管自体の短縮も,腸結核を疑う重要な所見となるため,冠状断像などでの確認も有用である.

今回提示したCT像のみから強く腸結核を疑うことは難しく,頻度も考慮すると日常診療では大腸がんを第一に考えることは妥当だと思われる.しかし,結腸の壁肥厚をきたす疾患は,腸結核のほか,潰瘍性大腸炎やCrohn病などの炎症性腸疾患,腸管Behçet病などもあり,決して大腸がんと決めつけてはいけない.誌面の関係上,掲載ができなかったが,ぜひ各病院の大腸がん症例のCTと見比べて,今回のCT像で「大腸がんにしてはちょっと変?」といった感覚をもっていただけると幸いである.

図1
図2
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プロフィール

山内哲司(Satoshi Yamauchi)
奈良県立医科大学 放射線科・総合画像診断センター
山本祐司(Yuji Yamamoto)
奈良県立医科大学 放射線診断・IVR学教室

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