画像診断Q&A

レジデントノート 2021年10月号掲載
【解答・解説】発熱と胸背部痛を主訴に受診した50歳代男性

Answer

敗血症性肺塞栓症(septic pulmonary embolism:SPE)

  • A1:不整形な大小の結節影が右中下肺野に3個,左下肺野に1個認められる(図1).左下肺野の結節影は側壁側の辺縁が不明瞭であり,これはincomplete border sign(不完全辺縁徴候, 図1と呼ばれる所見で,胸膜に接する病変であることを示唆する.また右下肺野の結節影も胸壁に接しており,胸膜直下の病変と考えられる.3日間の急性経過で生じた発熱と胸背部痛であり,SPEを最も疑う.その他の鑑別として,多発血管炎性肉芽腫症,真菌感染症,腫瘍性疾患などもあげられるが,これらは経過が非常に急である点が合わない.
  • A2:SPEを起こす原因として,麻薬などの静注薬物の常用,血管内留置カテーテルや心臓ペースメーカー感染,感染性心内膜炎,Lemierre症候群,皮膚軟部組織感染症,歯性感染症など1)があげられる.これらを示唆する上肢の注射痕,血管内留置物の有無,Osler結節・Janeway斑と心雑音,咽頭・頸部痛や頸部腫脹,皮膚軟部組織の感染,劣悪な口腔内環境などがないか注意して診察する.

解説

敗血症性肺塞栓症(septic pulmonary embolism:SPE)とは,一次感染源となる肺以外の臓器から病原菌を含んだ塞栓物が血行性に散布され,肺動脈経由で肺血管に詰まることで肺梗塞や肺膿瘍を生じる疾患である.SPEの胸部X線写真は多発性結節影が典型的で,斑状影浸潤影空洞影胸水貯留を認める場合もある.胸部CTではそれらの所見がより詳細に観察でき,特徴的な両側肺野末梢の多発性結節影図2)のほかに,結節に引き込まれるように肺動脈が流入しているfeeding vessel sign図2)を認める場合もある1,2)

SPEは前述のようにさまざまな原因で起こるが,本邦では麻薬などの静注薬物の常用は稀であり,近年は血管内留置カテーテル心臓ペースメーカー感染による発症の増加が指摘されている2).また歯性感染症(虫歯や歯周病が原因で細菌性の炎症が周囲の組織まで波及する疾患)は文献上の報告数は少ないが,実臨床で遭遇する頻度はそれほど珍しくはない.診断は,血液培養を提出したうえで,これら一次感染源の検索をする.本例は重度の歯周病と多数の抜歯適応歯を認めており,その他の原因は認めず,歯性感染症によるものと診断した.口腔内感染部位,血液培養から起炎菌は同定できなかったが,一般に歯性感染症によるSPEは培養陽性率が低い3)といわれている.

歯性感染症によるSPEは予後良好3)とされており,本例も抗菌薬投与と口腔内病変の治療により軽快したが,その他の原因の場合は必ずしも予後はよくない1).SPEは稀な疾患ではあるが,知っていれば診断はさほど難しくはない.早期に感染源を特定し治療することで治癒がめざせる疾患であるので,臨床医は本症の特徴的な胸部画像所見および臨床像を知っておくべきである.

図1
図2
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文献

  1. Ye R, et al:Clinical characteristics of septic pulmonary embolism in adults:a systematic review. Respir Med, 108:1-8, 2014(PMID:24183289)
  2. 佐野 剛,本間 栄:Septic pulmonary emboli.呼吸,32:58-61,2013
  3. Watanabe T, et al:Septic pulmonary embolism associated with periodontal disease:a case report and literature review. BMC Infect Dis, 19:74, 2019(PMID:30665352)

プロフィール

川述剛士(Takeshi Kawanobe)
JR東京総合病院 呼吸器内科
徳田 均(Hitoshi Tokuda)
東京山手メディカルセンター 呼吸器内科
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