簡潔さを磨く 1級:例文

書類準備では「何を書くか」とともに「どう書くか」に注意すると,ぐっと魅力が増します.
研究費の申請書としてどこに着目して,どのように改めるのが効果的でしょうか.
実際の申請書を例に,推敲力を磨いていきましょう.

※実際の申請書からの抜粋を基本としていますが,申請者が特定できないように,内容に関しては架空の化学反応・テーマ・語句に改めている箇所があります.

例文:どこが良くないか考えてみよう

①研究の学術的背景

近年の大学入試の選抜制度は従来の学力試験以外に,推薦入試やAO入試など様々な方式が混在していおり,入学時の学力の違いから入学後に授業についていくことが困難な例もしばしば見られる.本研究では多様な選抜試験の成績を用いて,大学入学後の学力を維持し,カリキュラム不適合を減少される学力支援システムを構築する.学術的背景として以下の3点に着目する.

(背景1)大学入試の選抜方法の多様化と過大評価

(背景2)大学入学時の成績を基にしたカリキュラム効果測定

(背景3)母数推定の簡易化の必要性

②研究期間内に何をどこまで明らかにしようとするのか

本研究では①であげた(背景1)〜(背景3)の各問題について以下のような理論的なことがらを明らかにし,大学入試の選抜方法に関わらず,入学後の学生の学力を客観的に判定することができる合否判定システムを構築する

(理論1)学力の過大評価を防ぐためのベイズ推定量の導出

(理論2)カリキュラム効果の推定に向けた拡張

(理論3)開発された項目判定理論の簡易化

これらの理論とシステム構築によって以下のような応用が想定される.

(応用1)多様な大学入試の選抜方法の合否判定の支援システムの開発

(応用2)損失関数設定の自動化機能の開発

(応用3)学力視点カリキュラムの効果測定機能の開発

推敲力養成道場:目次

児島 将康

(久留米大学客員教授,ジーラント株式会社代表取締役)

書籍「科研費獲得の方法とコツ」「科研費申請書の赤ペン添削ハンドブック」著者.毎年の科研費公募シーズン前後に20件近くの科研費セミナーで講演し,理系・文系を問わず申請書の添削指導を行っている.令和6年4月より研究者を支援するジーラント株式会社(https://g-rant.org/)を立ち上げ,活動している.

科研費に関する書籍・ウェビナーや制度の変更点など,科研費申請に役立つ情報を発信しております.
研究生活の役に立つ書籍なども少しご紹介しています.