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※ご所属は最新インタビュー掲載時のもの
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感染症ワクチンの現状と新たな開発戦略
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Jaap Goudsmit, MD, PhD
Crucell社Chief Scientific Officer
医学学位および博士号をオランダ アムステルダム大学で取得.Crucell社のCSO就任前は同大学のアカデミックメディカルセンター(AMC)に在籍し,1989〜2002年にはウイルス学部門の教授を勤める.現在でも貧困地域関連の伝染病部門の教授としてAMCに籍を置いている.また国立衛生研究所(NIH)やニューヨーク大学など多くの公共機関で教鞭をとっている.国際エイズワクチン構想の科学的諮問委員会の設立議長(IAVI),およびエイズに対するヨーロッパのワクチン委員会設立共同議長(EuroVac)を勤めた.1981年以来,査読付きの学術誌で450以上の論文を発表し,1993年のScience誌で最も有力なエイズ科学者とされた.2001年度のInstitute of Scientific Informationの調査によると,世界で最も多く引用された科学論文著者のひとりに挙げられている. |
医学の進歩に伴い,ウイルスや細菌による多くの感染症の原因が解明され制圧されてきた.しかし依然としてSARSや鳥インフルエンザなど新たな脅威が次々と出現し,世界規模での対策が求められている.今回,Crucell社のCSOであると共に,Science誌で最も有力なエイズ研究者と評された人物でもあるGoudsmit博士に,貧困地域の三大感染症と言われるエイズ,結核,マラリア等のワクチン開発の現状と研究戦略について話を伺った.(編集部 蜂須賀修司)
―どのような感染症について最も注目していますか?
世界では2大感染症分野があると思います.1つは,世界的に広まっている感染症として,今となっては比較的古い感染症だと言えますが,10〜20年の罹患の歴史をもっているエイズ,それからマラリアや結核などがあります.またもう1つは新型のインフルエンザもしくはインフルエンザ様の感染症があると思います.これらは,SARSなどを含めての比較的最近の感染症です.
―感染症について,これまでどのように研究に携わってきたのですか?
私は医学部を卒業した後,1970年代後半から1980年代初頭にかけて米国のNIH(National Institutes of Health)で研究を行いました.そこで最初の研究対象となったのがHIV(human immunodeficiency virus)でした.当時の私の研究戦略は,まず第一にHIVという疾患そのものを理解するということ,すなわちHIVの何がヒトを死に至らしめるのかを解明することでした.その研究の最初の10年間でわかったのは,今振り返ると当然のことですが,「ヒトがHIVのウイルスを沢山もっていればもっているほど,それだけ早くHIVに罹患する」ということでした.その後,1996年にエイズの治療薬が開発されました.この治療薬の作用は,ウイルスの量を減らし,それによってエイズの発症を遅らせることができるというものでした.
(中略)
―Crucell社が持っていた技術というのは?
PER.C6(R)という技術があります.PER.C6(R)自体はヒト由来の細胞株です.この技術を用いると,細胞株の中でウイルスの複製を行うことができます.特にインフルエンザに対しては非常に生産効率が高く,大量生産かつ安価なワクチン生産が可能です.またアデノウイルスをベクターとして免疫防御反応を起こす遺伝子断片を運ぶことができます.特徴としては,これは無血清の培養の条件下での培養が可能です.培養すると永久にかつ大量に増殖するという点で非常にユニークです.
(続きは本誌で)