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※ご所属は最新インタビュー掲載時のもの
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革新的な融資スタイルで開発早期化合物を医療の場へ
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Mark Kessel
Symphony Capital社,Co-Founder and Managing Director
Kessel氏は,2002年にSymphony Capital社を共同設立.それ以前は,Shearman & Sterling社でManaging Partnerとして全米最大級の国際的法律事務所の運営を監督.Kessel氏はSymphony Capital社での業務に加え,結核治療薬開発のための世界同盟(the Global Alliance for TB Drug Development)委員会のVice Chairmanも務める.ニューヨーク市立大学より経済学学士号を,シラキュース大学法学大学院より法学博士号を取得. |
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Kessel氏は1980年代半ば,法律事務所Shearman & Sterling社のサンフランシスコ・オフィスを率いる傍ら,投資家が臨床試験開発のリスクと成果を共有する,バイオテク企業向けのユニークな融資方法を創案した.今日,Kessel氏はプライベート・エクイティ会社のSymphony Capital社を興して投資家の側に立ち,さまざまな融資の仕組みを駆使してバイオテク企業のパイプライン開発を支援している.Kessel氏に同社の融資の仕組みについて聞いた.(MSAパートナーズ)
―融資を手がけるバイオテク企業が直面している資金面でのジレンマについて簡単にお聞かせください.
フェーズ1,2試験段階に化合物をもつ企業は,最大限に株主の価値を生み出すには自分たちの開発プログラムにどう資金を充てるのが最良なのか,難しい選択を迫られます.バイオテク企業は資金調達への膨大なニーズもありますが,医薬品開発の専門知識へのニーズも高く,当社はその両方を満たします.バイオテク企業の他の選択肢としては,大手製薬企業と初期開発段階でライセンス契約を結ぶことです.大手製薬企業にとって,化合物インライセンスの重圧はますます大きくなりつつありますが,フェーズ3試験段階の化合物には,魅力的なものはあまりに少ないため,さらに掘り下げてフェーズ1,2レベルでのライセンス契約に移行してきています.しかし多くの場合,これらの初期開発段階ライセンス契約は後払い,つまりバイオテク企業への支払いは主に化合物が開発マイルストーンに達してからの支払いや,販売開始後の売上のロイヤルティが大部分であり,前払い金はとても小額です.
(中略)
―どういうしくみになっているか教えてください.
当社は,特定のバイオテク企業の特定の化合物への出資だけを専門に行う開発用新会社を作ります.そして必要なだけの費用をかけてそこに出資し,取り決め通りの開発フェーズまで化合物を進めます.例えば,2つの化合物をフェーズ2まで出資することになり,それには5,000万ドルかかると仮定します.当社は開発用新会社に5,000万ドルを投資し,バイオテク企業は化合物をライセンスアウトし,代わりにバイオテク企業は,開発用新会社を前もって定められた価格で買うことにより化合物を買い戻すことのできる選択権を得ます.バイオテク企業は,化合物が臨床試験の成功により十分な価値を得たと見なせば,買収を行うことができます.買収価格は医薬品の価値よりも低いので,バイオテク企業はその後大手製薬企業に化合物を渡し,化合物の価値を最大限に獲得することができます.
(中略)
―可能性のある化合物のライセンス化を考慮する御社の検証方法は,製薬企業のそれと異なりますか?
バイオテク企業パートナーは,われわれの調査プロセスは,非常に綿密で,大手製薬企業よりも厳しいぐらいだと言いますが,それには理由があります.典型的な大手製薬企業とのライセンス契約では,前払い金はせいぜい500万ドル程度で,残りは開発段階に応じたマイルストーン金支払いです.一方当社は,資本金のすべてを最初に投下しますので,調査プロセスは綿密である必要があります.調査では世界中の専門家から意見を収集し,当社の見解を支持する意見だけでなく,そのバイオテク企業が推し進めようとしている治療的アプローチに反対の立場をとる専門家の意見も考慮します.そして,当社の開発プランがこうした専門家らの提起した課題に対応しているかどうか見るのです.
(中略)
―御社のアプローチが提起しようとしている他のニーズは何ですか?
バイオテク分野では,医薬品開発における高度な専門性が不足しています.当社では医薬品開発を行う企業の支援に特化したRRD(RRD International)社との提携を通じて,このギャップを埋めようとしています.RRD社の重役は,合計で100種類以上もの医薬品をFDA承認にまで導いており,これはバイオテク業界全体での合計よりも多い承認数です.つまり融資に加え,当社は医薬品開発における高い専門性を提供するということです.
(中略)
―バイオテク企業について,医薬品開発における専門性の欠如を指摘しておられますが,CRO(臨床試験受託組織)はそのためのものではないでしょうか?
典型的なCROは出来高払いモデルを採用しています.このモデルは極端に言うとCROが非効率的だったり,開発期間が長引いたりすればするほど,CROの収入が増えるのです.あるバイオテク企業は,代謝疾患の治療に利用する化合物に特化しているにもかかわらず,CRO側の相手が医療機器に特化していたため,非常に不満だと言っていました.RRD社はCROではないため,決まりきった作業は行いません.
(中略)
―何年もの間,数多くのバイオテク起業家にお会いしてきたことと思います.彼らに多く見られる誤解はありますか? それとも,彼らは将来の障壁について十分に理解していることが多いですか?
彼らは一般的に,医薬品開発の複雑性を低く見積もっているように思います.正しい認識が確立しておらず,多くの場合,まだ感覚がものを言う段階です.確かに科学はそこにあるのですが,複数の医薬品を落ち度なく医療の場まで届ける経験が欠けているため,その複雑さへの準備ができていないことが多いです.さらに,投資家基盤で資金を調達する場合に,投資家の期待が,設立者のもつ長期展望とどう異なるかを正しく認識していない傾向があります.
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