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ES細胞を用いた神経疾患の再生医療
〜その期待と課題〜

岡野栄之
岡野栄之(Hideyuki Okano)
慶應義塾大学医学部生理学教室

ES細胞は無限の自己複製能と多分化能を保持しており,再生医学や薬剤開発への応用が期待されている.中枢神経系疾患においても,特にヒトES細胞研究への期待は大きい.なぜなら,通常は入手の難しい正常ヒト神経系細胞を無限に生産することが理論上可能であり,細胞移植治療のみならず,スクリーニング時に種特異性が問題となる薬剤開発にも有用だと考えられるからである.実際,近年ヒトES細胞を含めたES細胞からの神経系細胞のさまざまな分化誘導系が多数報告されている.

一方で,脊椎動物の中枢神経系発生や成体中枢神経系でのニューロン新生,そしてシナプス可塑性を含めた神経再生能力などに関する研究も着実に進展している.今後,これらの研究とヒトES細胞を利用したヒト神経系細胞の研究の融合が,神経再生研究に新たな展開をもたらすことが期待されている.

最近われわれが行った,マウスES細胞を中心とした神経分化系とドーパミン作動性ニューロンのFACSを用いた精製法の開発成果も,この流れに組み込まれるものである.今後ヒトES細胞でも開発を行いその応用の可能性を広げることで,神経変性疾患の予防と治療法の開発に大きな進展が期待できる.

現在米国では,ヒトES細胞から誘導したオリゴデンドロサイト前駆細胞を用いた脊髄損傷の再生医療がFDAに申請されているという.ヒトES細胞の安全性と有効性を科学的に判定する解析系の確立が急務となっている.

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