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※ご所属は最新インタビュー掲載時のもの
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機能性食品の可能性とバイオマーカーの開発動向
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大澤俊彦(Toshihiko Osawa)
名古屋大学大学院生命農学研究科食品機能化学研究室教授
1974年東京大学大学院農学系研究科博士課程修了(農学博士),オーストラリア国立大学理学部化学科リサーチフェロー.1978年名古屋大学農学部助手,1988年同大学農学部助教授,1995年同大学農学部教授,現在に至る.その間,1990年より1年間,カリフォルニア大学デービス校環境毒性学部客員教授.名古屋大学大学院生命農学研究科において,「天然素材,特に植物性食品素材由来の機能性因子の探索と化学・機能性の解析」「抗酸化食品因子の生体内吸収・代謝の化学と機能性発現機能の解明」を行う傍ら,産学官の枠を越えて「大学発ベンチャー」創出事業にも取り組んでいる. |
バイオサイエンス研究は医薬分野で積極的に応用されているが,近年,食品を中心としたヘルスケアへの応用も急速に推進されている.トクホ(特定保険用食品)市場の拡大からも,食品分野への関心の高さがうかがえるが,実際の研究開発はどのように進められているのだろうか.そこで本インタビューでは,第11回日本フードファクター学会の会場において,機能性食品の第一人者である大澤俊彦会長に,機能性食品の現状と展望,バイオマーカー開発による疾病予防の可能性をうかがった.(編集部 一戸敦子)
―機能性食品の定義をお教えください.
食品の機能性には3つの種類があります.1つ目は食品の一次機能である栄養性,つまり糖質・脂質・タンパク質の三大栄養素にビタミン・ミネラルを加えた五大栄養素を指します.続いて二次機能は,味や香り,色やテクスチャーといった指向性で,食品工学では伝統的な分野です.そして私たちが注目したのは最後の三次機能で,例えば食欲を増減したり,脳の働きを良くしたり,疾病の予防につながるような食品の生理機能を言います.これが機能性食品の歴史のもとになりました.
いまから22年前,1984年に世界に先駆けて日本の大学を中心とした60以上のグループが機能性食品のプロジェクトを立ち上げました.これは文部科学省が主導となったもので,私も当初から参加していました.当時,五大栄養素と第六の栄養素である食物繊維以外のものは全て非栄養素とされていて,栄養素以外に科学の目は向けられていませんでしたが,私たちは非栄養素こそが三次機能をもっているのではないかと考え,研究をはじめたのです.
その頃米国でも,Phytochemicalsという概念が生まれていました.「Phyto」はラテン語で「植物」を意味し,植物性食品成分全般の非栄養素を研究する動きがはじまったのです.米国では1970年代から肥満による医療や保険問題がいずれ国家財政を破綻させると言われていて,1982年に上院のマクガバン委員会から“Nutrition, Food and Cancer”という報告書が出されました.続いて1990年には,デザイナーフーズ計画がはじまりました.これは作り手の意志のある食品という意味で,癌予防を目指して食品を意識的にデザインしようという動きでした.
(中略)
そして日本でも,糖尿病や癌の根本が食品だろうという考えが生まれ,機能性食品が大きなトレンドになったのです.
私たちは非栄養素という言葉が好きではありません.そこで“フードファクター”という言葉をつくり,1995年に浜松で開催された第1回国際フードファクター学会で,はじめて世に送り出しました.
(中略)
―本年の第11回日本フードファクター学会では,分子レベルの基礎研究成果が数多く発表されていましたね.
本会は大学や研究所の基礎研究者が中心になり,食品成分が身体の中でどのように機能しているか活発に議論する場を目指しています.特別講演では,イタリアのヴェローナ大学の鈴木尚憲教授が,STAT1を阻害するフラボノイド(EGCG,myricetin,delphinidin)が心臓の虚血再灌流傷害を抑制するという研究成果を発表されました
(中略)
―ご自身の研究内容をお教えください.
私は名古屋大学に来て28年になりますが,もともと有機化学が専門でした.当時,ジャガイモやタマネギの芽生え防止に放射線照射が認められていて,私たちの研究室では,放射線照射による食品成分の化学的変化の研究を行っていました.その研究の中で,じつは放射線が体内を酸化側に傾かせ,急速な老化のモデルとなることがわかったのです.
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