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科学コミュニティーの多様性に繋がる女性研究者支援制度

大隅典子
大隅典子(Noriko Osumi)
東北大学大学院医学系研究科 教授

1988年東京医科歯科大学大学院歯学研究科修了.歯学博士.1988年同大学歯学部助手,1996年国立精神・神経センター神経研究所室長を経て,1998年より現職.2004年10月より科学技術振興機構CREST「ニューロン新生の分子基盤と精神機能への影響の解明」研究代表者.専門は発生生物学,分子神経科学.著書に『神経堤細胞』(共著,東京大学出版会,1997年),人体発生学(分担,南山堂,2003年),訳書に『エッセンシャル発生生物学』(羊土社,2002年),『心を生みだす遺伝子』(岩波書店,2005年)などがある.文部科学省等の各種諮問委員等を務め,2005年より日本学術会議第20期会員.

「ご専門は?」と訊かれたら「脳の発生発達の分子機構です」と答えることにしている.実際には,「分子」そのものよりも「細胞の振る舞い」の方が面白くて仕方ないのだが,そういうピュアな研究をはじめ,いわゆる「出口に近い」テーマとしては,脂肪酸などの栄養素の影響を調べている.元々は「顔の発生」というマイナーな分野にいたが,大学院のときにボスが言われた「顔は中枢の表現型である」という言葉(ボスがオリジナルというわけではないはず.英語ではThe face predicts the brainというらしい)が心の隅にずっと引っかかっていて,気が付いたら「神経幹細胞の増殖と分化」などというメジャーなテーマを扱うようになっていた.

(中略)

● 研究者の多様な姿

研究者は研究だけしているわけではない.いや,研究だけする人がいてもよいのだが,コミュニティー全体としては多様な人材が必要だ.自分の所属する研究機関での教育や事務的な用務もあるが,それ以外にも,本を書いたり,他の研究者の論文や研究費申請をピア・レビューしたり,研究プロジェクトの評価をしたり,専門家として政府の諮問委員会に参加したり,小中校生や市民向けのアウトリーチ活動をしたり,色々なタイプの人間がいてこそ,健全な学術活動が成り立つ.私にとって,男女共同参画に関するアクションはこういった研究者のボランティア活動の一環である.

(中略)

● 女性研究者支援の加速と未来

2006年は,女性研究者育成支援についてのエポックメーキングな年である.2006〜2010年をカバーする第3次科学技術基本計画に女性研究者の採用比率を自然科学系全体で25%という数字が書き込まれ,それに基づいていくつもの施策が始まった.

(中略)

このような波状的アクションがどのような効果をもたらすか,実に楽しみなところである.女性であれ男性であれ,それぞれが楽しいと思えるサイエンスとのかかわり方を見つけられることが,私たちのコミュニティー全体の豊かさに繋がると思う.

バイオテクノロジー ジャーナル2006年9-10月号掲載
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