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先進医療は研究者と患者の共同参加で推進を

笹井芳樹
笹井芳樹(Yoshiki Sasai)
理化学研究所 発生・再生科学総合研究センター グループディレクター

1986年3月京都大学医学部卒業.神戸市立中央市民病院内科(研修医),UCLA医学部客員研究員等,京都大学再生医科学研究所教授を経て.2003年理化学研究所 発生・再生科学総合研究センターグループディレクター.博士(医学).
神戸先端医療財団評議員.Neuron誌編集顧問委員.genesis誌編集顧問委員.Developmental Dynamics 編集顧問委員.1998年Human Frontier Science Program Organization 10周年記念賞.

生命科学に携わる者は,医学部出身であるなしに関わらず自分の研究や活動を役立てたいという思いがどこかにあります.ゲノム創薬や再生医学等が期待されていますが,基礎研究からの先進医療の実現の過程(トランスレーショナルリサーチ)は長大で乗り越えるべき様々な課題があります.例えば,私は基礎科学者で神経発生を研究していますが,その中で生み出された技術には,現在研究医の手でパーキンソン病の再生医療開発に繋げられているものもあります.しかし,その応用実現には,研究医や科学者に加えて,患者さんが一緒になって課題に向かうことの大切さを感じてます.

(中略)

●整備が進む先進医療インフラ

神戸を例にあげると,神戸医療産業都市構想という新しい試みが展開してきています.まず,日本初の治験専門病院である先端医療センターが設置され,周囲に100社を超えるバイオ企業が進出しています.そして成果の面でも,例えば血管内皮前駆細胞を用いた血管の再生治療が行われ,約20症例の良好な結果を得ています.また,すでに次期の構想が動いており,2010年には大学病院レベルの専門ユニットを持つ先進医療病院や臓器移植センターの設置が計画され,生体シミュレーション科学に重要な次世代スーパーコンピュータのペタコンも稼働し出す予定です.

(中略)

●患者参加型の先進医療開発

患者さんとともに先進医療の開発を進めるうえで重要なポイントの第一は,情報発信です.先進医療の報道は大概,ある遺伝子が疾患に関わることがわかり今後の治療につながる,などと魅力的な見出しが伝わるだけです.それでどの程度臨床に近づいたのか,あるいは今後の課題はどのくらいか等は伝わりません.進捗の正確な情報と,患者さんがどこのステップになればどのように参加できるのかを明確に発信することが望まれます.このような成果と課題の両面での医療開発の情報発信/共有は,今後さらに重要さが増すでしょう.

(中略)

●科学者と患者の共同作業

再生医療等の新規領域では,先進医療の臨床試験の開始時にどうしてもリスクを伴う実験治療の面が出てきます.そこでは臨床試験の内容と意義に関する理解が医師と患者さんの間で共有される事が必須です.

一方,多くの慢性疾患の患者さんにとっては,待てるものならもっと安全性が保証されてから臨床試験に参加をされたいと思われるのは当然です.しかし,その場合でも,受ける時になって初めて患者さんが先進医療開発の内容を知るというのではなく,事前に研究開発過程を含めた知識や理解を持っておられるのとそうでないのでは,参加の積極性に大きな差が出ると思います.

続きは本誌でご覧下さい


バイオテクノロジー ジャーナル2007年9-10月号掲載
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