第1回 学振特別研究員とは?概要から採択までの流れ(2024.02.02更新)

 日本学術振興会特別研究員(通称:学振,以下では特別研究員)は「優れた若手研究者に,その研究生活の初期において,自由な発想のもとに主体的に研究課題等を選びながら研究に専念する機会を与える」ための制度で,「我が国の学術研究の将来を担う創造性に富んだ研究者」の育成が目的である.

 大学院博士課程(博士後期課程)在学者が対象のDC(Doctoral Course またはDoctor’s Course.Doctor Course は和製英語)と,博士の学位取得者と申請時に取得見込みの者のPD(Postdoctoralからきているのだろう)の2つのコースがある.DCはDC1とDC2に分かれ,それぞれ約700名と約1,100名の採用予定数,PDは約350名の採用予定数である.

 例年2月中旬に募集要項が公表される.令和5年度(2023年度)採用分の申請受付期間は令和4年(2022年)4月上旬から6月2日(木曜日)17時(厳守)までであった.

 申請書は特別研究員等審査会の専門委員(6名)による2段階書面審査を経て,10月上旬ごろまでに第一次採用内定者の開示が,次年の1月上旬ごろまでに第二次採用内定者の開示が,さらに2月下旬ごろまでに補欠者のなかからの採用内定者が開示される.

 令和3年の全国の大学院博士課程在籍者数75,306人(文部科学省学校基本調査より)からすると,採択者は「選ばれた者」である.実際に採択率は18.5%(DC1),18.8%(DC2),20.1%(PD)(令和4年度のデータによる)と,約5倍の高い競争率である.

 DCおよびPDの審査方針は,

①自身の研究課題設定に至る背景が示されており,かつその着想が優れていること.また,研究の方法にオリジナリティがあり,自身の研究課題の今後の展望が示されていること.

②学術の将来を担う優れた研究者となることが十分期待できること.

③(PDのみ)博士課程での研究の単なる継続ではなく,新たな研究環境に身を置いて自らの研究者としての能力を一層伸ばす意欲が見られること.

④(PDのみ)やむを得ない事由がある場合を除き,大学院博士課程在学当時(修士課程として取り扱われる大学院博士課程前期は含まない)の所属大学等研究機関(出身研究機関)を受入研究機関に選定する者,及び大学院博士課程在学当時の学籍上の研究指導者を受入研究者に選定する者は採用しない.

となっている〔令和5(2023)年度採用分募集要項より〕.このようにDCとPDでは評価指針が異なる.

目指せ、学振特別研究員!:目次

児島 将康

(久留米大学 分子生命科学研究所)

書籍「科研費獲得の方法とコツ」「科研費申請書の赤ペン添削ハンドブック」著者.毎年の公募シーズン前後に20件近くの科研費セミナーで講演.理系・文系を問わず申請書の添削指導も行っており,指導した人の採択率は6~7割にもなる.

科研費に関する書籍・ウェビナーや制度の変更点など,科研費申請に役立つ情報を発信しております.
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