著/坂本 壮(国保旭中央病院 救急救命科)
「初期研修は毎日がわからないことだらけで不安…」というあなたのために,各科研修の臨み方と効果的な勉強のポイントについて,坂本壮先生から実践的でアツいコメントをいただきました!
さらに編集部セレクトのおすすめコンテンツも紹介.不安を自信に変える最初の一歩を踏み出しましょう!
はじめての病棟当直は,誰でも緊張しますよね.昼間は明るかった病棟が夜になると急に静まり返り,時には少し心細さを感じることもあります.
そんななかで電話が鳴り,自分ひとりで病棟へ向かうことを想像すれば,不安になるのは当然です.心停止や呼吸不全といった重篤な場面に遭遇する可能性を聞けば,なおさら身構えてしまうでしょう.
ただ,夜間の急変の多くは日中の段階で芽を摘むことができます.患者さんの小さなサインを見逃さずに介入し,必要な指示や翌日の準備を整えておくことで,夜間は格段に落ち着いた当直になります.
働き方改革で夕方から勤務する体制も増えていますが,日中にやるべきことを丁寧に終え,適切に引き継ぐことが,自分にも同期にも安心をもたらすはずです.
抄読会と聞くと,どうしても面倒に感じてしまうかもしれません.
今は論文をそのままチャッピー(ChatGPT)に投げれば,それなりの形に整えて返してくれる便利な時代ですし,そうしたツールを使うこと自体は立派なスキルです.
ただ,本当に大切なのは“好奇心をもって臨めるか”という点です.
日々の臨床で生まれた疑問を耳学問ですませず,自分で調べ,得られた知識を実際の症例で活かせたときに得られる達成感は格別で,その手応えこそが成長を実感させてくれます.
研修医向けの良書は増えていますが,臨床の疑問にぴったり答えるのは,やはり一次文献に当たる作業です.
抄読会はその力を身につける絶好の機会ですので,ぜひプラスにとらえ,未来の自分のために取り組んでみてください.
救急の現場は緊張しますよね.救急医として働いている私も,毎日のようにビクビクしながら対応することが少なくありません.
救急診療の特徴は,診断がつく前の段階で対応し,時に急を要する状態の方も少なくないという点です.
すぐに診断をつけたくなりますが,それ以上に緊急度を的確に見積もり,状態を安定させることが優先されます.
緊急度の判断は,検査結果よりも,発症様式や冷汗・mottling skinなどの皮膚所見,バイタルサインを重視します.
まずはショックや外傷の初期対応を学び臨むとよいでしょう.慣れれば診療時間は短縮し,複数患者の対応も可能になります.
また,救急外来の看護師や救急隊の助けは大きく,ともに学ぶ姿勢も大切です.
焦らず一人ひとり丁寧にマネジメントし,自身のペースで成長していきましょう.
循環器内科で扱う主な疾患は,急性冠症候群(ACS)と心不全です.
研修医の皆さんが対応するのは,救急外来に胸痛や呼吸困難を主訴に来院し,迅速な対応が必要な症例が多いでしょう.そのため恐怖心もあるかもしれませんが,初期対応は意外とシンプルです.
ACSで最も急を要するのは,STEMIかどうかの判断です.胸痛を訴える患者,特に中高年以降では来院後10分以内に心電図を確認し,STEMIの有無を確認しましょう.
心不全でも虚血の有無がポイントとなるため,心電図は重要です.
また,NPPVをつける基準を知ること,装着前に気胸を除外することも大切です.
超音波も重要ですが,まずは心電図でACSを疑うべき所見を理解することからはじめましょう.心電図所見を踏まえて超音波を行い,指導医の所見を確認後,再度自分でプローブを当てて技量を磨いていくとよいでしょう.
肺炎,COPD,喘息,肺癌などを主に診ることになるでしょう.
肺炎は細菌性,誤嚥性,間質性など鑑別が多岐にわたり,病歴や身体所見とともに画像読影が鍵となるため,不安を抱える方も多いと思います.
解決策は,その都度考え,コツコツ学ぶしかありません.指導医や放射線科の先生とともに読影し,ポイントを一つひとつ整理していきましょう.
また,画像を撮影したからには,そこから得られる情報をもとに改めて身体所見を取り直すことも徹底しましょう.それによって身体診察の技も上達するはずです.
以前と比べ減りましたが,喘息の初期対応は使用する薬剤を含め,事前に整理して臨むとよいでしょう.
消化器内科では,吐下血・血便,胆嚢炎・胆管炎といった急性期疾患を担当し,ショック症例に遭遇することもあります.
輸血や緊急内視鏡の適応判断は大切ですが,これは調べれば確認できる部分です.
研修医として本当に力を発揮できるのは,処置室で“ただ処置に立ち会うだけでなく,患者の状態を俯瞰し,気道管理の要として場を支える人になることです.
指導医が手技に集中している間,患者の状態はいつ変わってもおかしくありません.大まかに状況の推移をつかみ,いざというときに動ける準備をしておくだけでも,場の安全性とあなた自身の学びは大きく変わります.
こうした主体性こそ,消化器内科ローテを成長の時間にしてくれるはずです.
限られた研修期間ですべての読影を習得することは困難です.だからこそ,目標をある程度明確にして臨むことが大切です.
私は救急外来で撮影頻度の高い頭部CTや,腹痛患者でよく行われる造影CTの読影にまず注力しました.読影の手順や見落としやすい点は,その都度指導医からフィードバックを受けながら積み重ねていくしかありません.
また,造影CTに立ち会う際は,造影剤アナフィラキシーを“起きないだろう”と軽視してはいけません.頻度は高くなくとも,迅速な対応が求められ,初動が予後に直結します.
そうした緊張感をもって臨む姿勢が,読影中の眠気を吹き飛ばし,あなたの読影力を確かなものにしてくれるはずです.
外科といえば手術ですよね.
消化管穿孔や悪性腫瘍の手術に入り,病変を直視できる経験は圧倒的な学びになります.
腹痛の評価は難しいものですが,外科の先生はお腹の中の構造が目に浮かぶ感覚で触診やエコーを行うため,解像度が段違いです.
そこまで到達しなくても,実際に痛みの原因となっている虫垂や穿孔部位を目で見ることで,あなたの腹部診療は一気に深みを増すはずです.
手術の流れをすべて覚える必要はありませんが,大まかな手順や自分の役割は事前に確認して臨みましょう.
カメラ持ちなどを雑用と感じてはいけません.至近距離で手技を観察できる,非常に価値の高い時間です.
そこで見えるものが,将来あなたの診療の質を確実に底上げしてくれます.
はじめての麻薬の管理や気管挿管,動脈ラインなどを行う場面が麻酔科研修であるという研修医も多いでしょう.
多くの手術に携わることになりますが,麻酔科医の立場からは術野を直接観察することは難しいため,まず全身管理に使用する薬剤を整理し,一般的な使用方法や用量を理解しましょう.
また,気管挿管や動脈ライン確保は,麻酔科では一般的には準備が整った状態で行うことができるため,救急外来など急を要する状況での手技と比較すると落ち着いて実施できるはずです.
ただし,事前にある程度の準備は必要です.気管挿管や動脈ライン確保の一般的な手順や注意事項を学んだうえで臨み,症例を積み重ねて手技を習得しましょう.
麻酔科研修を通じて,準備がいかに大切かがよくわかると思います.
精神科を回る前には,救急外来ですでにうつ病や統合失調症の診断がついている患者さんを漠然と診る機会が多いと思います.
精神科の先生の詳細なカルテを見てはじめて,患者さんの壮絶な過去や苦労を感じとることもあるでしょう.
精神科研修ではぜひ,診断に至る過程や治療方針の決定過程を学び,精神科の先生方が患者さんに対してどのように接し,外来でフォローしているのかを理解してください.
そして,日々の担当患者さんとの対話を通じて,実践的なコミュニケーション技法を身につけることが非常に大切です.
また,病棟から精神科へのコンサルトは,せん妄に対するものが多いでしょう.
せん妄の評価方法やピットフォール,薬剤選択に関してはある程度のフローがある施設が多いと思いますので,この機会に学びましょう.
産科では出産,婦人科では卵巣がんなどの悪性腫瘍の手術や入院管理を担当することが多いでしょう.
担当する患者さんには,異所性妊娠や切迫早産,あるいは流産を経験した方や若くして悪性腫瘍に罹患した方もいるでしょう.
各疾患の基本的な知識を習得することはもちろんのこと,人生の一大イベントである出産や女性特有の疾患を抱えた患者さんへの接し方を指導医から学びましょう.
また,産科では緊急帝王切開や産科出血など時間的猶予のない対応を,婦人科では妊孕性温存など患者さんの人生にかかわる意思決定支援を経験することになります.プライバシーへの配慮やデリケートな話題を扱う際のコミュニケーション技術も身につけましょう.
小児科では,子どものあらゆる訴えに幅広く対応する必要があり,初期研修の段階ではうまく立ち回れずに時間だけが過ぎていくように感じるかもしれません.
それでも構いませんが,小児科医が子どもや家族にどのように寄り添い,声をかけ,安心を与えているのかをぜひ間近で学んでください.
救急外来で出会う発熱や腹痛などは,実際には多くが上気道炎やインフルエンザ,便秘といった比較的軽症の病気ですが,その一例一例に家族の不安が詰まっています.後になって自分に子どもが生まれると,医師の言葉がどれほど親の心を支えていたかに気づくはずです.
地域研修の1カ月は,これまでとは全く違う経験となり,大きな成長の機会になります.
検査体制や設備が限られ,外来や当直でこれまで以上に自分の判断が求められる場面も増えるでしょう.
普段ならすぐに確認できた採血検査やCTが簡単に使えない環境に立つことで,自分がどれほど恵まれた環境で研修していたかに気づくはずです.しかし,将来働く場所によっては,こうした環境こそ日常になります.
高血圧や糖尿病といった外来診療を学ぶだけでなく,限られた資源のなかで丁寧に医療を続けている人々の姿にも目を向けてください.
また,地域からの紹介にはどんな思いや期待が込められているのかを意識することも大切です.
さらに,その土地ならではの美味しい食べ物や美しい風景に触れることも忘れずに.地域を知り,その魅力を感じることが,研修の時間をより豊かなものにしてくれます.
臨床研修を前に不安を抱くのは当然のことですし,その不安が完全に消えることもありません.無理に消そうとせず,付き合いながら少しずつ成長していけば大丈夫です.
医学は学ぶほどに疑問が生まれ,向き合うほど新しい課題に気づくものです.まだ現場に立っていない今の段階で,過度に心配する必要はありません.
ただし,自身の健康管理だけは大切にしてください.体調が悪ければ集中できず,エラーも起こりやすくなります.
国家試験後の休息や旅行を楽しむことはとても大切ですが,研修がはじまる頃には生活リズムを整え,しっかり睡眠をとり,心身を整えておいてください.それが,臨床のスタートラインに確実に立つための最低条件です.