目次

記事収録書籍

レジデントノート2021年9月号 Vol.23 No.9

治療効果が変わる! 利尿薬の選び方・使い方

根拠をもって使うための基本知識と病態に応じた処方のコツを教えます

龍華章裕/編

定価:2,200円(本体2,000円+税)

利尿薬

特集にあたって

龍華章裕

研修医の先生に限らず,ある程度の年数を経験していても,臨床の現場における利尿薬の使用にはいつも頭を悩ませられます.その理由として,担当患者さんの細胞外液量過剰が「利尿薬の適応としてよいか」の判断が難しいことや,利尿薬自体の種類が多く「何をどのように使えばいいか」の判断に悩む,ことなどがあげられます.

そこで本企画では,① 利尿薬の基礎的な知識,② 利尿薬使用を悩むような局面の考え方,③ 実際に各科専門医の先生がどのように利尿薬を使用しているか,を解説することで,利尿薬使用における一連の流れを理解してもらえるような企画を考えました.

現場で使える知識とよく遭遇する症例を通して,読者が実践力を身につけられるような企画になればと思っております.

本特集の構成

本特集では,前半[基本編:利尿薬についての基礎的知識],後半[実践編:臨床で利尿薬をどう使う?]の二本立てにしました.これは,前半で基本的な知識を養ったうえで,後半の実践編を読むことで,スムーズに学習できると考えたからです.それでは,おのおのみていきましょう.

「基本編:利尿薬についての基礎的知識」

利尿薬のオーバービューでは,利尿薬の作用部位や作用機序の基本的事項を全体像がわかるように解説し,ループ利尿薬やMRA(mineralocorticoid receptor antagonist:ミネラルコルチコイド受容体拮抗薬)の種類と使い分けを解説しています.

臨床でよく使用する利尿薬(ループ利尿薬,サイアザイド系利尿薬)の基本では,臨床現場で最も頻用されるフロセミドやサイアザイド系利尿薬について解説しています.皆さんも一度は,「何で腎臓内科医はあんなにフロセミドを高用量で使うのだろう?」と思ったことがあるのではないかと思いますが,そういう疑問に対する答えがみつかるはずです.

トルバプタンはどのようなときに使う? 使うときの注意点は?では,最近,心不全,肝硬変,SIADH(syndrome of inappropriate antidiuretic hormone secretion:抗利尿ホルモン不適切分泌症候群)など,使用局面が増えてきているトルバプタンの基礎的な内容と使用するうえでの注意点について解説されています.入院中にトルバプタンを導入する際は,どのようなことに気をつけるべきかを学んでください.

利尿薬を使用する際の注意点や気をつけたい副作用は?では,利尿薬の適応や副作用について解説しています.「そもそも目の前の患者さんは利尿薬の適応?」や「この患者さんの電解質異常は利尿薬が原因?」などの素朴な疑問に答えてくれると思います.

「実践編:臨床で利尿薬をどう使う?」

救急医が利尿薬を使う局面とはでは,救急外来での利尿薬使用の実際について解説しています.救急外来で目の前の患者さんに利尿薬を使うべきかどうかを悩んだことは誰にでもあるはずです.何を根拠に利尿薬使用を考えるか,をここで学んでください.

そして,腎臓内科医/循環器内科医/消化器内科医が利尿薬を使う局面とは』では,おのおのの分野のエキスパートの先生に,症例ベースで利尿薬の使い方を解説してもらいました.ローテートする科で,「何でこの科の先生は,この薬をよく使うんだろう」だとか,「目の前の体液過剰の患者さんにどういう根拠で治療戦略を組み立てるんだろう」など,一番皆さんが疑問に思うところに答える内容になっています.

筆者も,必ず根拠をもって利尿薬を使用するようにはしていますが,常に自信をもっているわけではありません.ただ,治療がうまくいかなかったときの次の対策を考えるようにはしています.皆さんにも本特集で,利尿薬を処方する際の根拠を少しでも身につけてもらえたら,と思っています.

龍華章裕(Akihiro Ryuge)
名古屋大学大学院医学系研究科 病態内科学講座 腎臓内科学
研修医の2年間は大変なこともあるかと思いますが,いろいろな経験ができますので,楽しんで頑張ってください!

※本サービスに記載の診断法・治療法,ならびに著者プロフィール・所属機関等の情報は,レジデントノート2021年9月号の発行時点のものとなります.引用している診療ガイドライン等の改訂については,ガイドライン発行元学会等の最新情報を確認していただく必要があります.