病棟で遭遇する皮膚トラブル!
研修医の皆さん,本誌を手にとっていただき,誠にありがとうございます.本特集を読んでいただいているのは,「皮膚疾患が楽しくて,興味がある」といった積極的な理由より,「よく看護師や患者さんから相談されるけど,どうしたらいいかわからない」といった消極的な理由が多いのではと推察します.
今回の特集では,病棟で遭遇する皮膚トラブルに焦点を当てています.皆さんが現在働かれている病院,地域,環境はさまざまだと思いますが,「共通して活躍する場面,迷う場面,皮膚科医に相談したい場面はどこか?」と考えたときに,真っ先に頭に浮かんだ場所が,「病棟」でした.研修病院に入院病床がないことは稀ですし,担当医となる多くの研修医は病棟のフロントラインで患者さんにとって最も身近な存在です.われわれベテランの医師よりも,研修医の皆さんを信頼し,心を許している患者さんも多いはずです.
研修医の熱意はスゴイ!
僕の働いている病院を少し紹介します.当院は茨城県水戸市にある「水戸協同病院(正式名称は,筑波大学附属病院水戸地域医療教育センター 総合病院水戸協同病院)」です.ご存知の方もいるかと思いますが,徳田安春先生が総合診療科を立ち上げ,全国に先駆けて大学病院と民間病院の密接なコラボレーションを実現した少しだけ有名な病院です.皮膚科医から見ていても,「これはスゴイ!」と思うことばかり.特筆すべきは,臓器別の垣根がないこと!! これに尽きます.「内科全体が総合診療体制」であり,総合診療科のレジデントチームはすべての多彩な内科疾患をマネジメントすることで,多種の疾患を経験しつつ,日々成長・進化しています.
僕が言いたいのは,そんな環境のなかで,「皮膚疾患もしっかり診られるようになりたい」と彼らが努力し続けているということです.湿疹やじんま疹,帯状疱疹といったcommonな疾患から,薬疹や壊死性筋膜炎などの重症な疾患まで,チーム併診で全身管理を担当してくれたり,個人としても「カビを見つけたい」と,患者さんの趾間から採ってきた鱗屑を皮膚科外来で顕微鏡を使って一緒に覗いたり,「皮膚生検の基本を学びたい」と僕のもとにやってきて自らメスを持ったりと常に前向きで興味津々に取り組んでいます.そんな環境にいたら,どうでしょう?
僕は彼らに教えたくなります.助けたくなります.成長してほしいと思います.
皮膚科医のなかには,「真菌検査は皮膚科医がするもの」「生検なんて皮膚科でなければちゃんとできない」という先生もいるかもしれません.でも,僕はそうは思いません.研修医だってできることは多いし,「やりたいんだったら,教えるからやってみなさい」というスタンスです.彼らが皮膚疾患のプライマリケアを実践してくれたおかげで,助けられたことも多いですし,休日に呼び出されなくて済んだこともあります.
そして,何よりも教えることはこちらの学びになりますし,研修医からモチベーションをもらっているのはわれわれであることは紛れもない事実です.