痛みの理学療法シリーズ:足部・足関節痛のリハビリテーション
痛みの理学療法シリーズ

足部・足関節痛のリハビリテーション

  • 赤羽根良和/著
  • 2020年03月05日発行
  • B5判
  • 232ページ
  • ISBN 978-4-7581-0246-9
  • 定価:5,720円(本体5,200円+税)
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第3章 疼痛や可動域制限に対する評価と治療

3 ローカルな評価と治療
③ 筋肉に対する評価と治療

Point

  • 筋の圧痛所見,硬さ,疼痛の種類をみることで筋攣縮・筋短縮・癒着かを鑑別する.
  • 筋攣縮・筋短縮・癒着のうち,いずれの障害が生じているかによって筋の伸張に必要な時間や加える収縮の強さ・時間は異なる.
  • 運動療法と評価は交互に行う.

筋の障害には筋攣縮,筋短縮,癒着がある.炎症期では筋攣縮が主体であり,増殖期から成熟・再構築期にかけて筋の線維化(筋短縮)や損傷した組織間での癒着が生じる.

筋攣縮・筋短縮・癒着の改善は,足関節・足部の疼痛や可動域制限を軽減・消失するとともに,筋力や関節運動速度といった機能を回復させるための必須条件である.

筋が疼痛や可動域制限の要因となるメカニズムと運動療法

1)筋攣縮

 1  メカニズム

筋攣縮(muscle spasm)は筋が痙攣した状態であり,血管の痙攣も伴っていることが多い.関節の周辺組織が何らかの侵害刺激を受けると侵害受容器が反応し,その信号が脊髄内に伝えられる.脊髄反射によって前角細胞のα運動線維に作用し,筋は攣縮を引き起こす(図1).

筋攣縮を生じると,筋細胞外に発痛物質を放散するため疼痛が発生する(図2).その際,高閾値機械受容器やポリモーダル受容器の閾値を下げるため,圧刺激に対して感受性が高くなる1~5).また,脊髄反射によって筋緊張ならびに筋内圧が高い状態が持続し,その状態で過度な収縮や伸張刺激が加わると疼痛を引き起こすきっかけとなる(神経筋反射障害1,6,7)

つまり筋攣縮の評価は,圧痛所見,筋緊張,収縮痛,伸張痛をみることが重要となる(表1).

図1
図2
表1
 2  治療

筋攣縮には,筋に対して軽い伸張と収縮を加えた等尺性収縮を反復的に行わせる運動療法が有効である(図38).等尺性収縮による腱の軽い牽引刺激は,ゴルジ腱器官を興奮させ,その信号は脊髄反射の抑制性介在ニューロンを介して,筋をリラクセーションさせる(Ib抑制図4).また,反復的な筋収縮は,筋ポンプ作用により筋内の血液循環の改善や発痛物質の排泄を促し,筋内圧が減少して圧痛所見や収縮・伸張に伴う疼痛を軽減・消失させる.

軽い伸張とは,目的とする筋に心地よい伸張感が得られる程度のことである.収縮の力はMMTで1(筋収縮を認める)~2(重力を除けば全関節運動ができる)程度とする.10回を1セットとして,筋腹の圧痛が軽減することを確認しながら実施する.

図3
図4

2)筋短縮

 1  メカニズム

筋短縮(muscle shortning)は伸張刺激に対して筋が伸びることができず,抵抗性が高まっている状態である.これは,筋実質部の伸展性低下と筋膜の線維化などによって生じる1,9)

筋を引き伸ばすと筋線維を構成する最小単位の筋節が長軸上に引き伸ばされるが,この筋節の量が減少することで,伸びにくく抵抗性が増した状態となることを筋実質部の伸展性の低下という(筋実質部障害図5).

筋膜の線維化とは,関節の不動(固定)や運動不足などによって,筋膜や筋内膜のコラーゲン分子の末端に架橋結合(平行に走行する組織に対して直行して結合すること)が形成されて筋膜が硬くなり,伸張刺激に対して伸びにくく抵抗性が増した状態をいう(図610,11).しかし,組織としては安定しており,閾値が高いため圧刺激に対する疼痛は軽度である12).また,過度な筋収縮を行っても疼痛は発生しにくい.

つまり筋短縮は,伸張痛・筋の硬さを認め,圧痛所見はないかあっても軽度で,収縮痛はない場合に疑われる.

図5
図6
 2  治療

筋短縮には,適度な筋の伸張と収縮を加えた等尺性収縮を反復的に行う運動療法が有効である1).適度な伸張とは,疼痛を認めない程度の伸張であり,目的とする筋に伸張感が得られるまで2~3秒行うことをいう.収縮の力はMMT3(重力に抗して全関節運動ができる)~4(抵抗を加えても重力に抗して全関節運動ができる)程度とする.10回を1セットとして,伸張に対する筋腹の抵抗が軽減することを確認しながら実施する.

等尺性収縮を用いると筋腱移行部が適度に引き伸ばされ,筋節が合成(増殖)することで,筋実質部の延長効果が期待でき,伸張に伴う疼痛を軽減・消失させることになる.また,反復的に筋収縮を行うことで,熱産生が生じて架橋結合したコラーゲン分子が分離しやすくなる.

3)癒着

 1  メカニズム

癒着(adhesion)とは組織間が一塊となって滑走しなくなることであり,粘性が高まり滑走性が失われた状態も含む.軟部組織が損傷すると,その修復過程においてフィブリノーゲンの沈着や線維芽細胞の増殖・成熟による瘢痕組織が形成され,周囲の組織を巻き込みながら癒着・瘢痕化する.そのため,癒着部周辺は硬くなるとともに,近位方向への滑走性(proximal amplitude)や遠位方向への滑走性(distal amplitude)に対する抵抗性が増し,収縮痛や伸張痛を認める(組織間滑走障害図7).

つまり,癒着の評価は収縮痛,伸張痛,組織の硬さをみることが重要となる.なお,癒着は筋のみならず,皮膚・皮下包・滑液包・脂肪体・靭帯・関節包など,あらゆる軟部組織の隙間で起こることに留意する.

筋の硬さについては,筋攣縮は関節肢位にかかわらず筋緊張が高い状態,筋短縮は伸張肢位に伴い筋が硬くなる状態であるのに対して癒着は関節肢位に伴い癒着部周辺のみが硬い状態である.

また,隣接している組織は一方の外傷により癒着や滑走障害が生じやすいことに留意する.

図7
 2  治療

癒着した組織に対しては滑走刺激を加え,組織間の滑りを引き出す運動療法が有効である.癒着がある組織に対し,適度な伸張操作(遠位方向への滑走刺激)に続いて,適度な筋収縮(近位方向への滑走刺激)を加える.この操作をくり返し行うことで癒着した組織は徐々に剥離されていく.

ここで用いる伸張とは,疼痛を認めない程度の伸張であり,癒着部に伸張感が得られるまで2〜3秒間行うことをいう.収縮の力はMMTの3~4程度とし,等張性収縮と等尺性収縮を併用し,10回を1セットとして,癒着部の硬さが軽減することを確認しながら実施する.

なお,筋には硬くなりやすい部位が存在する.おそらく筋のなかでも負荷が加わりやすい部位にこのような現象が生じると考えている.各筋に対して硬さや圧痛を認めやすい部位も明記したため参考にしていただきたい.

 2 以降では各筋に対する伸張操作と収縮操作を解説している.筋攣縮・筋短縮・癒着に対する運動療法は,伸張操作では伸張の強さや伸張時間が,収縮操作では収縮の強さ・時間・方法(等張性収縮・等尺性収縮)が異なるだけである.筋に対する運動療法では,攣縮を先に回復させ,その後に短縮や癒着にアプローチする.筋の状態に応じてそれぞれを組み合わせ,必要な運動療法を実現していただきたい.

下腿三頭筋の評価と治療

1)腓腹筋

 1  評価
  • 圧痛所見:内側頭・外側頭ともに筋腹から腓腹筋腱移行部にかけて圧痛を認めることが多く,膝関節付着部では顕著である.
  • 筋の硬さ:健側と比較して,内側頭・外側頭ともに大腿骨内側顆と外側顆の後面から腓腹筋腱移行部にかけて硬さを認めることが多い.
  • 隣接している組織:表層では下腿筋膜,深層ではヒラメ筋と接する.
  • 伸張痛の評価:膝関節伸展位を開始肢位とする.足関節の背屈を加えていき,背屈10°に達する前に疼痛が生じる場合は,腓腹筋の伸張痛を疑う(図8a).
  • 収縮痛の評価:膝関節伸展位を開始肢位とする.足関節の底屈運動を行わせ,抵抗を加えて疼痛を認めた場合は,腓腹筋の収縮痛を疑う(図8b).
 2  治療

[攣縮]

  • ①患者の膝関節を伸展位に保持する.
  • ②一方の手はアキレス腱に合わせ,他方の手で足部を把持する.
  • ③一方の手でアキレス腱の伸張感を触知しながら,他方の手では足関節を背屈方向に誘導し,攣縮部に軽い伸張刺激を加える(図8a).
  • ④③の操作後に,足関節を底屈してもらい,腓腹筋を軽く収縮させる(図8b).
  • ⑤①~④を一連の運動として,腓腹筋の筋緊張・収縮痛・伸張痛が軽減し,圧痛所見が消失するまでくり返し行う.

[短縮]

  • ①患者の膝関節を伸展位に保持する.
  • ②一方の手はアキレス腱に合わせ,他方の手は足部を把持する.
  • ③一方の手でアキレス腱の伸張感を触知しながら,他方の手は足関節を背屈方向に誘導し,短縮部に適度な伸張刺激を加える(図8a).
  • ④③の操作後に,得られた角度から足関節を底屈してもらい,セラピストは抵抗を加えて腓腹筋に等尺性収縮をさせる(図8b).
  • ⑤①〜④を一連の運動として,腓腹筋の伸張痛・筋の硬さが軽減・消失するまでくり返し行う.

[癒着]

  • ①患者の膝関節を伸展位に保持する.
  • ②一方の手は腓腹筋の癒着部に合わせ,他方の手は足部を把持する.
  • ③一方の手で癒着部の伸張感を触知しながら,他方の手は足関節を背屈方向に伸張し,癒着部に遠位方向の滑走刺激を加える(図8a).
  • ④③の操作後に,得られた角度から足関節を底屈してもらい,等張性収縮と等尺性収縮をさせて近位方向に滑走刺激を加える(図8b).
  • ⑤①〜④を一連の運動として,腓腹筋の収縮痛・伸張痛・組織の硬さが軽減・消失し,滑走性が得られるまでくり返し行う.
図8

2)ヒラメ筋

 1  評価
  • 圧痛所見:ヒラメ筋線からヒラメ筋腱移行部にかけて圧痛を認めることが多く,腓腹筋腱移行部では顕著である.
  • 筋の硬さ:健側と比較して,ヒラメ筋線からヒラメ筋腱移行部にかけて硬さを認めることが多く,特に内側において顕著である.
  • 隣接している組織:表層では腓腹筋,深層では筋膜・深後側コンパートメントの表層と接する.
  • 伸張痛の評価:膝関節屈曲位を開始肢位とする.足関節の背屈を加えて,背屈20°に達する前に疼痛が生じる場合は,ヒラメ筋の伸張痛を疑う(図9a).
  • 収縮痛の評価:膝関節屈曲位を開始肢位とする.足関節の底屈・内反運動を行わせ,抵抗を加えて疼痛を認めた場合は,ヒラメ筋の収縮痛を疑う(図9b).
 2  治療

[攣縮]

  • ①患者の膝関節を屈曲位とする.
  • ②一方の手はアキレス腱に合わせ,他方の手で足部を把持する.
  • ③一方の手はアキレス腱の伸張感を触知しながら,他方の手で足関節を背屈方向に誘導し,短縮部に適度な伸張刺激を加える(図9a).
  • ④③の操作後に,得られた角度から足関節を底屈・内反してもらい,ヒラメ筋を軽く収縮させる(図9b).
  • ⑤①~④を一連の運動として,ヒラメ筋の筋緊張・収縮痛・伸張痛が軽減し,圧痛所見が消失するまでくり返し行う.

[短縮]

  • ①患者の膝関節を屈曲位とする.
  • ②一方の手はアキレス腱に合わせ,他方の手で足部を把持する.
  • ③一方の手はアキレス腱の伸張感を触知しながら,他方の手で足関節を背屈方向に誘導し,短縮部に適度な伸張刺激を加える(図9a
  • ④③の操作後に,得られた角度から足関節を底屈・内反してもらい,セラピストが抵抗を加えてヒラメ筋に等尺性収縮をさせる(図9b).
  • ⑤①~④を一連の運動として,ヒラメ筋の伸張痛,筋の硬さが軽減・消失するまでくり返し行う.

[癒着]

  • ①患者の膝関節を屈曲位とする.
  • ②一方の手はヒラメ筋の癒着部に合わせ,他方の手で足部を把持する.
  • ③一方の手は癒着部の伸張感を触知しながら,他方の手で足関節を背屈方向に伸張し,癒着部に遠位方向の滑走刺激を加える(図9a).
  • ④③の操作後に,得られた角度から足関節を底屈・内反してもらい,ヒラメ筋を収縮させて近位方向の滑走刺激を加える(図9b).
  • ⑤①~④を一連の運動として,ヒラメ筋の収縮痛,伸張痛,組織の硬さが軽減・消失し,滑走性が得られるまでくり返し行う.
図9

前脛骨筋の評価と治療

 1  評価
  • 圧痛所見:下腿近位の前外側面や伸筋支帯下で圧痛を認めることが多い.
  • 筋の硬さ:健側と比較して,脛骨の近位外側前面から前脛骨筋腱移行部にかけて硬さを認めることが多く,特に脛骨側において顕著である.
  • 隣接している組織:外側では長趾伸筋,内側では脛骨,表層では下腿筋膜,深層では長母趾伸筋・深腓骨神経・前脛骨動静脈と接する.
  • 伸張痛の評価:足関節外反位を開始肢位とする.足関節の底屈を加えて底屈45°に達する前に疼痛が生じる場合は,前脛骨筋の伸張痛を疑う(図10a).
  • 収縮痛の評価:母趾・足趾屈曲位を開始肢位とする.足関節の背屈・内反運動を行わせ,抵抗を加えて疼痛を認めた場合は,前脛骨筋の収縮痛を疑う(図10b).
図10
 2  治療

[攣縮]

  • ①患者の膝関節を屈曲位とする.
  • ②一方の手は前脛骨筋の筋腹に合わせ,他方の手で足部を把持する.
  • ③一方の手で前脛骨筋の伸張感を触知しながら,他方の手は足関節を底屈・外反方向に誘導し,攣縮部に軽い伸張刺激を加える(図10a).
  • ④③の操作後に,得られた角度から足関節を背屈・内反してもらい,前脛骨筋を軽く収縮させる(図10b).
  • ⑤①~④を一連の運動として,前脛骨筋の筋緊張・収縮痛・伸張痛が軽減し,圧痛所見が消失するまでくり返し行う.

[短縮]

  • ①患者の膝関節を屈曲位とする.
  • ②一方の手は前脛骨筋の筋腹に合わせ,他方の手で足部を把持する.
  • ③一方の手で前脛骨筋の伸張感を触知しながら,他方の手は足関節を底屈・外反方向に誘導し,短縮部に適度な伸張刺激を加える.
  • ④③の操作後に,得られた角度から足関節を背屈・内反してもらい,セラピストは抵抗を加えて前脛骨筋に等尺性収縮をさせる.
  • ⑤①~④を一連の運動として,前脛骨筋の伸張痛・筋の硬さが軽減・消失するまでくり返し行う.

[癒着]

  • ①患者の膝関節を屈曲位とする.
  • ②一方の手は前脛骨筋の癒着部に合わせ,他方の手で足部を把持する.
  • ③一方の手で癒着部の伸張感を触知しながら,他方の手は足関節を底屈・外反方向に伸張し,癒着部に遠位方向の滑走刺激を加える.
  • ④③の操作後に,得られた角度から足関節を背屈・内反してもらい,前脛骨筋を収縮させて近位方向の滑走刺激を加える.
  • ⑤①~④を一連の運動として,前脛骨筋の収縮痛・伸張痛・組織の硬さが軽減・消失し,滑走性が得られるまでくり返し行う.

長趾伸筋の評価と治療

 1  評価
  • 圧痛所見:下腿中央の前面や伸筋支帯下で圧痛を認めることが多い.
  • 筋の硬さ:健側と比較して,脛骨外側顆・骨間膜から長趾伸筋腱移行部にかけて硬さを認めることが多く,特に脛骨と骨間膜において顕著である.
  • 隣接している組織:外側では長・短腓骨筋,内側では前脛骨筋,長母趾伸筋,表層では下腿筋膜と接する.
  • 伸張痛の評価:足趾屈曲位,母趾伸展位を開始肢位とする.足関節の底屈を加えて底屈40°に達する前に疼痛が生じる場合は,長趾伸筋の伸張痛を疑う(図11a).
  • 収縮痛の評価:母趾屈曲位を開始肢位とする.足関節の背屈と足趾の伸展運動を行わせ,抵抗を加えて疼痛を認めた場合は,長趾伸筋の収縮痛を疑う(図11b).
 2  治療

[攣縮]

  • ①患者の膝関節を屈曲位とする.
  • ②一方の手は長趾伸筋の筋腹に合わせ,他方の手で足部を把持する.
  • ③一方の手で長趾伸筋の伸張感を触知しながら,他方の手は足関節を底屈,足趾を屈曲方向に誘導し,攣縮部に軽い伸張刺激を加える(図11a).
  • ④③の操作後に,得られた角度から足関節を背屈,足趾を伸展してもらい長趾伸筋を軽く収縮させる(図11b).
  • ⑤①~④を一連の運動として,長趾伸筋の筋緊張・収縮痛・伸張痛が軽減し,圧痛所見が消失するまでくり返し行う.

[短縮]

  • ①患者の膝関節を屈曲位とする.
  • ②一方の手は長趾伸筋の筋腹に合わせ,他方の手で足部を把持する.
  • ③一方の手で長趾伸筋の伸張感を触知しながら,他方の手は足関節を底屈,足趾を屈曲方向に誘導し,短縮部に適度な伸張刺激を加える(図11a).
  • ④③の操作後に,得られた角度から足関節を背屈,足趾を伸展してもらい,セラピストは抵抗を加えて長趾伸筋に等尺性収縮をさせる(図11b).
  • ⑤①~④を一連の運動として,長趾伸筋の伸張痛・筋の硬さが軽減・消失するまでくり返し行う.

[癒着]

  • ①患者の膝関節を屈曲位とする.
  • ②一方の手は長趾伸筋の癒着部に合わせ,他方の手で足部を把持する.
  • ③一方の手で癒着部の伸張感を触知しながら,他方の手は足関節を底屈,足趾を屈曲方向に伸張し,癒着部に遠位方向の滑走刺激を加える(図11a).
  • ④③の操作後に,得られた角度から足関節と背屈,足趾を伸展してもらい,長趾伸筋を収縮させて近位方向の滑走刺激を加える(図11b).
  • ⑤①~④を一連の運動として,長趾伸筋の収縮痛・伸張痛・組織の硬さが軽減・消失し,滑走性が得られるまでくり返し行う.
図11

長母趾伸筋の評価と治療

 1  評価
  • 圧痛所見:下腿遠位の前面や伸筋支帯下で圧痛を認めることが多い.
  • 筋の硬さ:健側と比較して,骨間膜の中1/3前面から長母趾伸筋腱移行部にかけて硬さを認めることが多く,足背部を走行する腱が過度な緊張によって浮き上がっていることもある.
  • 隣接している組織:表層の外側では長趾伸筋,表層の内側では前脛骨筋,さらに前脛骨筋との間隙には深腓骨神経・前脛骨動静脈と接する.
  • 伸張痛の評価:足趾伸展位,母趾屈曲位を開始肢位とする.足関節の底屈を加えて底屈40°に達する前に疼痛が生じる場合は,長母趾伸筋の伸張痛を疑う(図12a).
  • 収縮痛の評価:足趾屈曲位を開始肢位とする.足関節の背屈と母趾の伸展運動を行わせ,抵抗を加えて疼痛を認めた場合は,長母趾伸筋の収縮痛を疑う(図12b).
図12
 2  治療

[攣縮]

  • ①患者の膝関節を屈曲位とする.
  • ②一方の手は長母趾伸筋の筋腹に合わせ,他方の手で足部を把持する.
  • ③一方の手で長趾伸筋の伸張感を触知しながら,他方の手は足関節を底屈,母趾を屈曲方向に誘導し,攣縮部に軽い伸張刺激を加える(図12a).
  • ④③の操作後に,得られた角度から足関節を背屈,母趾を伸展してもらい,長母趾伸筋を軽く収縮させる(図12b).
  • ⑤①~④を一連の運動として,長母趾伸筋の筋緊張・収縮痛・伸張痛が軽減し,圧痛所見が消失するまでくり返し行う.

[短縮]

  • ①患者の膝関節を屈曲位とする.
  • ②一方の手は長母趾伸筋の筋腹に合わせ,他方の手で足部を把持する.
  • ③一方の手で長母趾伸筋の伸張感を触知しながら,他方の手は足関節を底屈,母趾を屈曲方向に誘導し,短縮部に適度な伸張刺激を加える(図12a).
  • ④③の操作後に,得られた角度から足関節を背屈,母趾を伸展してもらい,セラピストは抵抗を加えて長母趾伸筋に等尺性収縮をさせる(図12b).
  • ⑤①~④を一連の運動として,長母趾伸筋の伸張痛・筋の硬さが軽減・消失するまでくり返し行う.

[癒着]

  • ①患者の膝関節を屈曲位とする.
  • ②一方の手は長母趾伸筋の癒着部に合わせ,他方の手で足部を把持する.
  • ③一方の手で癒着部の伸張感を触知しながら,他方の手は足関節を底屈,母趾を屈曲方向に伸張し,癒着部に遠位方向の滑走刺激を加える(図12a).
  • ④③の操作後に,足関節を背屈,母趾を伸展してもらい,長母趾伸筋を収縮させて,近位方向の滑走刺激を加える(図12b).
  • ⑤①~④を一連の運動として,長母趾伸筋の収縮痛・伸張痛・組織の硬さが軽減・消失し,滑走性が得られるまでくり返し行う.

後脛骨筋の評価と治療

 1  評価
  • 圧痛所見:下腿中央の後面,長趾屈筋接触部,内果後面に圧痛を認めることが多い.
  • 筋の硬さ:健側と比較して,骨間膜・脛骨内側後面から後脛骨筋腱移行部にかけて硬さを認めることが多い.
  • 隣接している組織:外側では長母趾屈筋,内側では長趾屈筋,表層では脛骨神経・後脛骨動静脈,深層では骨間膜,さらにヒラメ筋と接する.
  • 伸張痛の評価:膝関節屈曲位,足関節の外転・外反位を開始肢位とする.足関節の背屈を加えて背屈20°に達する前に疼痛が生じる場合は,後脛骨筋の伸痛を疑う(図13a).
  • 収縮痛の評価:膝関節屈曲位を開始肢位とする.足関節の底屈・内転・内反運動を行わせ,抵抗を加えて疼痛を認めた場合は,後脛骨筋の収縮痛を疑う(図13b).
 2  治療

[攣縮]

  • ①患者の膝関節を屈曲位とする.
  • ②一方の手は後脛骨筋の筋腹に合わせ,他方の手で足部(楔状骨レベル)を把持する.
  • ③一方の手で後脛骨筋の伸張感を触知しながら,他方の手は足関節を背屈・外転・外反方向に誘導し,攣縮部に軽い伸張刺激を加える(図13a).
  • ④③の操作後に,得られた角度から足関節を底屈・内転・内反してもらい,後脛骨筋を軽く収縮させる(図13b).
  • ⑤①〜④を一連の運動として,後脛骨筋の筋緊張・収縮痛・伸張痛が軽減し,圧痛所見が消失するまでくり返し行う.

[短縮]

  • ①患者の膝関節を屈曲位とする.
  • ②一方の手は後脛骨筋の筋腹に合わせ,他方の手で足部(楔状骨レベル)を把持する.
  • ③一方の手で後脛骨筋の伸張感を触知しながら,他方の手は足関節を背屈・外転・外反方向に誘導し,短縮部に適度な伸張刺激を加える(図13a).
  • ④③の操作後に,得られた角度から足関節を底屈・内転・内反してもらい,セラピストは抵抗を加えて後脛骨筋に等尺性収縮をさせる(図13b).
  • ⑤①〜④を一連の運動として,後脛骨筋の伸張痛・筋の硬さが軽減・消失するまでくり返し行う.

[癒着]

  • ①患者の膝関節を屈曲位とする.
  • ②一方の手は後脛骨筋の癒着部に合わせ,他方の手で足部(楔状骨レベル)を把持する.
  • ③一方の手で癒着部の伸張感を触知しながら,他方の手は足関節を背屈・外転・外反方向に伸張し,癒着部に遠位方向の滑走刺激を加える(図13a).
  • ④③の操作後に,得られた角度から足関節を底屈・内転・内反してもらい,後脛骨筋を収縮させて近位方向の滑走刺激を加える(図13b).
  • ⑤①〜④を一連の運動として,後脛骨筋の収縮痛・伸張痛・組織の硬さが軽減・消失し,滑走性が得られるまでくり返し行う.
図13

(中略)

引用文献

  • 沖田 実:痛みの発生メカニズム- 末梢機構.「ペインリハビリテーション」(松原貴子,他/ 著),pp134-177,三輪書 店,2011
  • 「筋感覚研究の展開 改訂第2版」(伊藤文雄/著),協同医書出版社,2005
  • 疼痛の理学療法 第2 版(鈴木重行,他/ 編),三輪書店,2008
  • 黒澤孝朗:痛みのメカニズム.「新医科学大系 第7 版(刺激の受容と生体運動)」(石井威望,他/ 編),pp153-167,中 山書店,1995
  • Mense S:Nociception from skeletal muscle in relation to clinical muscle pain. Pain, 54:241-289, 1993
  • 吉田 徹:いわゆる変形性関節症の疼痛について―骨内圧からの考察―.整形外科, 26:745-752,1975
  • 「軟部組織の痛みと機能障害 原著3版」(Caillet R/著,萩島秀男/訳),pp1-117,医歯薬出版,1998
  • 林 典雄:等尺性収縮を用いた肩関節ROM 訓練.理学療法,17:485-489,1990
  • 林 典雄:膝関節拘縮に対する運動療法の考え方〜膝関節伸展機構との関連を中心に〜.J Clin Phys Ther,8:1-11, 2005
  • 須釜 聡:関節固定が筋肉コラーゲンに及ぼす影響- ラットのヒラメ筋におけるコラーゲンの生化学的分析-.PT ジャー ナル,29:345-348,1995
  • 片岡英樹,他:骨格筋の変化に由来した拘縮.「関節可動域制限 第2 版ー病態の理解と治療の考え方」(沖田 実/ 編), pp93-114,三輪書店,2013
  • 林 典雄:肩関節拘縮の機能学的特性.理学療法,21:357-364,2004
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