Stay’s Anatomy神経・循環器編〜99%が理解できた解剖学オンライン講義

Stay’s Anatomy神経・循環器編

99%が理解できた解剖学オンライン講義

  • 町田志樹/著
  • 2020年10月26日発行
  • A5判
  • 183ページ
  • ISBN 978-4-7581-0250-6
  • 定価:2,750円(本体2,500円+税)
  • 在庫:あり
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第1講 神経

葉,回,野というコトバのルール

みなさん,この大脳皮質は灰白質の集まりです.だから高次脳的な機能を持っているんですけど,みなさんはここを覚えるのがすごい苦手なはずです.実際,臨床現場に出ても苦手な方すごくいっぱいいるんですよ.わたしは,臨床家に対して,もう1万名以上にこうした講習会や,解剖の講義をしているんですけど,現場に出ても苦手な方は本当に多いんですね.例えばね,

「前頭葉の中心前回は一次運動野である」

と言われて,ちゃんと構造とその役割を説明できますか?「もう,何言ってるのかわかんない」と思っている人もいるんじゃないのかな.ちょっと今の名称を,分解して考えてみましょう.前頭葉の よう は葉っぱの葉ですよね.中心後回の かい は回るという字.一次運動野の は野原の野ですけど,この葉・回・野,これにはちゃんと名前のルールが存在しているんです.そのルールがわかると,大脳の構造が明確にわかってくるんですよ.では図を見ながら,そのルールの説明をしますね.

p316,10章ー図5A を再び見よ

大脳の構造を勉強する前に少し,解剖学の勉強のポイントを説明したいと思います.じゃあこの図の構造を,いきなり全部覚えようとしても効率が良くないんですよね.わたしは解剖学の勉強って,地図を覚える作業に似ていると思うんです.地図を覚えるのであれば,いきなり小さい街から覚えることはないですよね.まずは都道府県を覚えて,そこから市,そして細かい街を覚える.きっとこの順番になると思うんですよ.だから大脳だって,まずは都道府県に相当する大きな区分から覚えていくわけです.ちょっとここでハンカチを使って,大脳の名称のお約束事を説明しますね.

どこにでもあるハンカチ

さぁ,ここでハンカチを用意しました.なんかハトとか出てきそうな雰囲気はありますけど手品ではありませんよ.このハンカチ,クシャクシャクシャって丸めると,すごく小さくなりますよね.大脳皮質はその表面積を確保するために,シワシワになっているんですよ.シワシワに.

くしゃくしゃ

こういう構造,他にもありますよね.小腸とかもそうですよね.小腸も凹凸があることによって,表面積を確保しているわけです.そういった構造,実は人体には多いんです.ちょっとこのハンカチを見て欲しいんだけど,折りたたむと溝ができますよね.そうしたら,別の場所にもう1つ溝を作ります.そうすると,わかるかな.溝と溝の間がモコモコッと膨らむわけですよ.ということでこうすると,ハンカチに2つの溝と1つの盛り上がりができました.

膨らむところを

この溝のことを,大脳では こう っていいます.また,溝と溝の間の盛り上がった領域を かい っていうんですよ.ということで回と溝,わかりましたか.だから中心前回というのは中心溝の前方にある回,中心溝の前の盛り上がった部分を示しているんですよ.

地図を覚える

先ほどの話に戻しますが,いいですか.大脳の構造をいきなり全部覚えるのは,現実的ではありません.ということでまず,主要な構造に分けて順番に覚えていきましょう.東京都だったら,23区に分ける.そういったイメージです.では大脳をいくつに区分するかというと,まず4つに分けて覚えましょう.大脳を4つに分けるのは先ほど説明した溝なんだけど,特別に大きな溝が3つ存在しています.それが何かというと,まずここ.

p316,10章ー図5A を再び見よ

ここに 中心溝 ちゅうしんこう という大きな溝があります.別名はローランド溝と呼ばれています.このローランド溝を境界として前方が前頭葉,後方が頭頂葉っていうんですよ.

これも解剖学の名称のお約束事なんですが,臓器などをいくつかの領域に分けるときに葉っぱの葉, よう という字を使うんですよ.肺もそうでしょ? 右肺は上葉・中葉・下葉みたいな.ちなみに左肺は上葉・下葉だけでしたよね.ね,肝臓も左葉に右葉,方形葉に尾状葉なんてのもありましたよね.大きなエリアに分けるときには,葉という字を使うことを覚えましょう.

では話を戻しましょう.次に覚える大きな溝が 外側溝 がいそくこう .別名はシルビウス溝です.シルビウス溝を境界として下方にあるのが側頭葉,上方にあるのが先ほども出てきた前頭葉です.なかなかこのローランドとか,シルビウスって名称を覚えるのは大変ですよね.これね,昔の偉い方々は研究した構造物に自分の名前を付けていたんです.だからこれ,人物名なんですよ.ローランドさんやシルビウスさんが,この名称を付けたんです.人物名が由来の構造物って,覚えるのが少し大変ですよね.中心溝がローランド溝で外側溝がシルビウス溝.頑張って覚えましょうね.そして最後の大きな溝,これがなかなかわかりにくい.

p316,10章ー図5B を再び見よ

ここ, 頭頂後頭溝 とうちょうこうとうこう です.これは左右の大脳半球をパカっと分けて,内側から見たときの溝です.だから,外側からは見えない溝です.割って内側から見たときにあるのが,頭頂後頭溝.この溝が頭頂葉後頭葉を分けています.

もう一回言いますね.中心溝(ローランド溝)が前頭葉と頭頂葉,外側溝(シルビウス溝)が前頭葉と側頭葉,頭頂後頭溝が頭頂葉と後頭葉に区分しているわけです.これでまず,東京都23区みたいに大きな区分ができたわけです.

あと追加でもう1つ.左右の大脳半球を分けているものがあります.これは「大脳の縦の裂」と書いて, 大脳縦裂 だいのうじゅうれつ といいます.大脳縦裂によって,大脳は左右に分けられていることも併せて覚えておきましょう.

ということでちょっと復習しましょうか.大脳は主要な3つの溝によって,4つの葉に区分されていました.これは必ず,覚えてください.意外に国家試験の出題率は低いけど,それはあくまで試験として出にくいだけ.臨床は別ですよ.さぁ,それを踏まえて以下の色分けした図を見てみましょう.

p317,10章ー図6 を再び見よ

中心溝の前方が前頭葉でしたよね.中心溝の後方が頭頂葉.外側溝の下方にある側頭葉も確認してください.頭頂葉と後頭葉は表面から見て色分けされていますが,内側から見ないとわからない頭頂後頭溝も忘れないでね.

全体像,わかりましたか? こういったカタチになるわけです.先ほど言った通り,前頭葉のうち,中心溝の前方にあるモコッと盛り上がった領域を中心前回というんです.いい? 同様に中心溝の後方にあるモコッと盛り上がった領域,頭頂葉の一部を中心後回といいます.

中心前回が一次運動野で,中心後回が一次体性感覚野.これは国家試験的にも臨床的にも,めちゃくちゃ大事.医療職を目指すのであれば,常識も常識だと思います.ではいよいよ,がどういう意味を持つのか説明したいと思います.

野原の野,一次運動野の野が何かというと,機能に対する名前なんです.一次運動野に一次体性感覚野,視覚野,嗅覚野などがありますが,野は葉・回がどういった機能を持っているのかを示す名称です.葉・回・野,この名前の区分がわかりましたか? これ,絶対に覚えてください.これね,本当に知らない人がいっぱいいるんですよ.これがわかるだけで大脳の構造や機能がわかりやすくなると言った理由,理解してもらえましたか?

口を動かそう〜中脳,橋,延髄

次に話をしたいのは,間脳脳幹です.

間脳と脳幹.間脳というのは「間の脳」と書いて間脳,脳幹は「脳の幹」ですね.たぶん,みなさんの中で脳幹は説明できるけど,間脳は説明できないという方がたくさんいるはずです.これ,もし学生で間脳をちゃんと説明できたら,本当にたいしたもんですよ.というのは実は理由があるんです.いいですか.間脳の記載は書籍によって違うんです.これ,本によっては間脳は脳幹の一部だと記載するものもあれば,両者をちゃんと分けて記載する場合もあるんです.なので「どちらで覚えればいいの?」と思うかもしれませんが,わたし個人としては分けて覚えたほうがいいと考えています.間脳と脳幹は別のほうがいい.

機能も役割も別だから.臨床的にも国家試験的にも,分けたほうがスッキリと知識が整理されるはずです.ではまず,脳幹から勉強していきましょう.

p330,10章ー図18 を見よ

脳幹は中脳・橋・延髄から構成されています.上から順番に中脳・橋・延髄.一番上の中脳の下方は,大きく膨らんで橋になります.さらに下にいくと細くなって延髄.中脳・橋・延髄.英語の授業じゃないんだけどさ,わたしが言ったらその後で復唱してね.

中脳・橋・延髄!はいっ!

もう1回,中脳・橋・延髄!はいっ!

最後1回,中脳・橋・延髄!!はいっ!!

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